「機巧奇傳ヒヲウ戦記」 第09話「激闘! 父ちゃんはどこだ」
アラシの妨害をかわし、ついに高山にたどり着いた一行。しかし既にマスラヲはその地におらず、ヒヲウは落ち込んでしまう。その前に現れた浪人・清河は、攘夷のために機巧の力を貸せと語る。が、炎にエレキテルが搭載されていたことを知ったヒヲウは元気を取り戻し、スチームインジンを搭載して暴走するアラシたちの屋台を撃退する。炎の可能性を知ったヒヲウは、炎を見せるため、父が向かった可能性のある京に旅立つのだった。
第九話にして父・マスラヲがいる可能性のある飛騨高山に到着したヒヲウ一行。
ついに当初の目的地にたどり着いたわけですが、ストーリーの一区切りに相応しく、見所がぎゅぎゅっと詰め込まれた物語が展開、これまでで最高の盛り上がりを見せてくれます。
アラシの襲撃を退けて(この冒頭の戦い、谷を渡る吊り橋の上の攻防の中に描写される炎のギミックとアクション描写が、これだけで普段のクライマックス並みの迫力)、高山にたどり着いたヒヲウ一行ですが、瞼の父はそこにはなく、ヒヲウはものすごい落ち込み&むくれっぷり…
(ここで、スチームインジンを作ろうとして高山の職人たちから嘲笑われ、去っていくマスラヲの背中には色々と考えさせられます)
そこに近づいてきたのは、何と清河八郎! 浪士組結成から約一年前の姿ですが、確かに色々あって諸国を放浪していた清河がここにいても平仄は合いますが、これは意外な出会いであります。
しかし清河が、攘夷実行の手段として、我が国古来の機巧に目をつけ、ヒヲウたちを味方に引き入れようという展開には「その組合せがあったか!」と大いに感心。こういうひねりがあるから、この作品(というか會川時代劇)はやめられません。
しばらく登場してこなかった、「機巧(=テクノロジー)は何のためのものか?」という命題が、ここで再び触れられることになります。
もっとも、機巧を武器にすることが嫌いな上に、ご機嫌最悪だったヒヲウにはガン無視されて終わりでしたが…
ちなみにアバンタイトルは、この清河が新徳寺で行った浪士隊へのアジ演説の模様。これが新撰組誕生のきっかけになったわけですが、ちょい役とはいえ、芹沢、近藤、土方、沖田に原田も登場して、これも嬉しいサービスです。
(しかし寺がカラクリ屋敷化して、仏像が原田に襲いかかるのはあんまり)
さて、そろそろ今回のクライマックス。実は炎に発電機関が搭載されていることを知ったヒヲウが元気を取り戻すのとほぼ期を一にして、アラシと三バカが改造したスチームインジン搭載の暴走屋台が高山を蹂躙!
これに立ち向かう炎は、四つ辻で左右を屋台に挟まれた上に、前後から屋台の連続体当たりを喰らう(アラシは結構な軍師だなあ)というピンチですが…
もちろんここで炎の新たなる力が発動、腕を通じて放たれた電気はスチームインジンを爆発させ、さらに夜空に美しい火花を放ちます。
この辺りの流れは、お約束的といえばその通りなのですが、主人公ロボの新兵器お披露目エピソードのフリをしつつも、ヒヲウの抱えてきた悩み(そして相手にしなかったとはいえ清河の誘い)が炎の放つ電気の火花のように美しく昇華され、さらに「カラクリは作ったり色々なことを試したりするものだ!」という台詞に繋がっていく辺りの構成の巧みさは、溜息がでるほどです。
(新兵器を出しつつ、機巧の兵器利用を否定してみせるアクロバットが、見事に決まった!)
今回も敗れたアラシは、今度は自分の手で機巧を作りたいとおとなしく引き下がるのですが、これも、ライバルが新たな力を求めて…という展開に留まらぬ温かみを感じさせてくれます。
その他、先に述べた吊り橋の上でのメカ描写や、清河たちとの対決で見せる才谷の立ち回りや、少年たちのメンターとしての才谷の描き方や、炎の発電の際のユーモラスな描写などなど、小さな見所も含めて、本当に最初から最後まで見所満載の今回。
本当に面白いものみたなあ…と大満足のエピソードでした。
さて、京からも手紙を出していたマスラヲを追って、炎は京へ。華と雪も同行を望み、そして清河も何やら企み…と、舞台は移れど、これからの展開も本当に楽しみなのです。
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