「若さま同心徳川竜之助 風神雷神」 真の敵、その剣の正体は
ついに「若さま同心徳川竜之助」シリーズが十冊目の大台に突入しました。
この「風神雷神」が記念すべき十冊目ではありますが、お話の方はそれどころではない、まさに風雲急を告げる展開。深手を負った竜之助の再起の道は…
前作のラストで、宿敵・柳生全九郎との決闘に勝利したものの、逆上した全九郎の刃で左手を落とされた竜之助。
左手はかろうじて繋がったものの、それで簡単に復活できるわけでもなく、しばらく病床に就くことを余儀なくされた竜之助は――
それでもめげずに、床の中から事件解決に挑むのでした。
というわけで、本書の、特に前半では、竜之助がリハビリ代わりに(?)岡っ引きや先輩から聞かされた情報を元に、事件を解決していくベットサイド・ディテクティブ形式で物語が展開することになります。
いやはや、この展開には驚かされましたが、これが想像以上に面白い内容になっていて、さらに嬉しい驚きを味わいました。
さすがにシリーズが(一定のスタイルを保った形で)ここまで続いてくると、どうしてもマンネリになってしまう部分はあるのですが、ここで意外な形で、新しい空気を取り入れてきたのには感心いたします。
もちろん、単に新味があるというだけでなく、事件の内容そのものも、推理ものとしてなかなかよくできたものとなっているのも、嬉しいところでした。
さて、本シリーズには、怪事件・珍事件に挑む奉行所ものとしての側面と、もう一つ、竜之助の会得した秘剣・葵新陰流を破らんとする敵と対決する剣豪ものとしての側面があります。
左手が完治しておらず、到底刀を取れる状態ではない竜之助ですが、しかしそれでも彼を狙う敵は現れます。
さらに本書では、前の巻でほのめかされた真の敵、竜之助と全九郎の戦いを陰で操っていた存在がついに登場。
その剣の正体は――
と、毎度毎度のことながら、今回も猛烈に気になるヒキとなったところで幕。
この、真の敵の目的は何か、そして、未だ傷の癒えない竜之助に抗する術はあるのか…
おそらくはこのシリーズも残り数冊ではないかと思いますが、最後まで一気にこのテンションで駆け抜けていただきたいものです。
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