「巷説百物語」第4巻 日高版百物語、ひとまず完結
日高建男先生による漫画版「巷説百物語」もこの第四巻で最終回。「死神 或は七人みさき」のラストから、「柳女」「帷子辻」「老人火」の四話を収録して、完結となります。
シリーズ最大のクライマックスともいえる「死神 或は七人みさき」は、大半が第三巻に収録されているため、ラストのみの収録となっているのが少々残念ですが、冷静に考えると豪快極まりないあの結末も、きちんと真っ正面からビジュアル化しているのに好感が持てます。
(第三巻に収録された「船幽霊」の時も思いましたが、アレの存在はかなりギリギリかと…)
しかしちょっと残念なのは、大いに盛り上がった「死神」と、そのエピローグと言うべき「老人火」の間に、「柳女」「帷子辻」が入ることでしょうか。
これは、原作発表順ではなく、作中の時系列順というこの漫画版の構成のためであり、そしてもちろん独立した作品としてみれば、この二編は文句なく面白い作品なのですが、ちょっとどの作品も割を食ったかな…という印象は、正直なところあります。
さて、それは贅沢な悩みとして、めでたく原作の「巷説百物語」「続巷説百物語」を全編漫画化した本作。
「巷説百物語」という作品(シリーズ)は、全編の情報量(台詞)が非常に多い上に、人の変態心理・異常心理を妖怪に仮託して事件を解決するという内容ゆえに、漫画化するには、大胆にアレンジするか、真っ正面から忠実に描くか、どちらかのアプローチしかない、なかなか難しい作品であったかと思います。
この日高先生による漫画版は、後者のアプローチを取ったわけですが、台詞量が非常に多いのは上記の通り仕方ないとして、それ以外の点については、よくぞここまできっちりと漫画化したものだと、感心いたしました。
特にキャラクターのビジュアルは、リアルさと漫画っぽさのぎりぎり中間点で、物語のイメージに似合ったものであったかと思います。
(田所様は、あれはもうあれしかないのでよいのです)
特に又市は――ちょっと格好良すぎるという声はあるかもしれませんが――もうこのビジュアルしか浮かばないはまりっぷりであったかと思います。
さて、日高先生による漫画版はここでひとまず完結ですが、あとがき漫画によれば、原作者・編集サイドは続編GOの様子。ここまで来たら原作全作品描ききって欲しいものです。
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