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2010.04.23

「風が如く」第7巻 好漢・百地三太夫

 やっぱり連載打ち切り、しかし最終回はまれに見る感動的な幕切れ…ということで、ファンとしてはどうにも複雑な気分の「風が如く」。
 単行本の方は、あと二冊で完結とのことですが、そのラスト一つ前、第七巻であります。

 この巻で描かれるのは、前の巻から引き続いての五右衛門の過去編。
 幼い頃、百地三太夫に拾われ、伊賀の里で忍びとして過酷な試練を受け、ついに上忍候補生となった五右衛門が、しかし陰で行ったのは、盗賊まがいの行為…?

 と、そこで制裁に乗り出した三太夫と五右衛門との対決からこの巻は始まります。
 色々と悲劇の予感しかしないシチュエーションですが、しかし、過去編の前半がそうであったように、こちらの「このパターンであればこうだろう」という予想を、良い意味で次々と裏切っていくのが本作。

 その裏切りの中心人物(?)と言えるのが五右衛門の師・百地三太夫であることは、読者であれば皆納得してくれるでしょう。
 百地三太夫といえば、フィクションで登場する場合はかなりの高確率で悪人。大抵の場合、伊賀の上忍・絶対権力者として、配下の命など塵芥としか思わない人物という印象が強い…のは白土三平先生のおかげかもしれませんが、まあ時代ものの上忍というのは大体において印象が悪いものであります。
(ちなみに巷説では三太夫は弟子の五右衛門に妻をNTRされたことになっております)

 しかるに本作の三太夫先生は、忍びの力を用いた平和な国の建設を夢見る理想家にして、弟子の成長を心から案じ、身を挺して正しい生き様を見せる熱血漢。おそらくは、百地三太夫史上に残る好漢でありましょう。

 しかし、三太夫と五右衛門を待ち受けるのは、過酷な運命の悪戯。
 五右衛門が何故風の力を宿し、そして仲間を拒否して一人流離う盗賊となったか…過去編は、それを描いていくこととなります。

 そして過去編が終わり、始まるのは滝川一益との戦いの第二ラウンド…のはずが、ここからがまた怒濤の展開!

 戦いの中で明らかになる、一益の意外な正体(かぐやの秘宝の力で、彼の正体が現れるシーンはちょっと楽しい)。
 第三勢力として乱入する秀吉と――やっぱり生きていた――斬鬼さん。
 そして乱戦の果ての五右衛門とある人物との和解――

 急展開の連続は、色々と背景があるのでしょうが、しかしそれで面白くないかといえば答えはもちろん否。
 剣術対剣術、忍術対忍術、忍術対近代兵器(!)のアクション連発ときて、ここにグッとくるドラマが入るのですからつまらないわけがない。

 こんなに面白い作品があと一巻でおしまいというのは、やはり色々と思うところありますが、しかしそれは今更言っても詮ないお話でしょう。
 あとは、来月発売の最終巻をただ楽しみに待つとしましょう。

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