「サンクチュアリ THE幕狼異新」第1巻 異能の狼、聖域を守る
幕末の京都、治安維持のために刃を振るう新選組は、一人一人が人知を超えた異能を持つ戦闘集団だった。その新選組の前に現れたのは、倒幕派を陰で操る謎の集団・八瀬童子。王城の聖域(サンクチュアリ)を守る新選組に託された密命とは…
「天地明察」で一躍時代小説シーンに躍り出た冲方丁が原作を担当する新選組もの――しかし「天地明察」しか読んだことのない方は、一読確実に目を白黒させるであろう作品、それが本作「サンクチュアリ THE 幕狼異新」であります。
既に無数のクリエイターにより題材とされている新選組でありますが、しかしくせ者の冲方丁が原作を書いて普通で終わるわけがない。
何と本作での彼らは、言うなれば一人一芸の能力者集団。鬼使いの土方、遠隔視の沖田、再生能力の斎藤、風使いの井上、幻術使いの谷三十郎(ってまたえらいのを持ってきたな…)etc.、こんな新選組見たことない! と断言できます。
考えてみれば冲方作品には「ピルグリム・イェーガー」「シュヴァリエ」と、伝奇活劇――虚実織り交ぜたキャラクターたちの能力バトルの要素が強い――の二大雄編があるわけで、その意味では本作の内容も意外ではないかもしれません。
しかし、こうしてある意味コロンブスの卵的な作品を見せられると、その奇想には改めて驚かされます。
正直なところ、この第一巻はその大部分が、新選組の面々がどのような能力を持っているかを描く「顔見せ」以外のものではなく、その点では食い足りない部分もあります。
しかし、既に現時点でも、実は池田屋事件で死んでいた近藤勇(土方と沖田しか知らない替え玉の正体にまた吃驚!)、松平容保に下された密勅と、先が楽しみになるようなフックが見られ、こちらの期待を煽ってくれます。
何よりも、新選組の「選」の字の中に「巽」が隠されているとして、彼らの他にあと七つ、京を巡る八卦を象徴する集団が存在するという趣向は、これはもう厨臭いと言われようが何と言われようが、これから登場するであろう連中が、楽しみでなりません。
最後になってしまいましたが、作画の方は野口賢でこちらも全く不安なし(「黒塚」を除けば時代ものはあの「柳生烈風剣連也」以来?)。
あとは腰を据えて、破天荒な物語の行方をじっくりと見せてもらうとしましょう。
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