「ムシブギョー」第1巻 大江戸モンスターハンター走る
日夜剣の修行に励む少年・月島仁兵衛は、江戸の奉行所にスカウトされて勇躍江戸に向かう。しかしそこで待ち受けていたのは、人々を襲う巨大な蟲だった。新中町奉行所、またの名を蟲奉行所の同心となった仁兵衛は、巨大蟲退治のプロフェッショナルたちとともに、日夜奔走する。
書店に行って、帯の藤田和日郎先生の推薦の言葉を目にして手に取った本作――恥ずかしながらこれまでノーチェックでしたが、これが享保年間を舞台とした時代活劇。
それも、巨大生物相手に戦うプロフェッショナルの物語とあれば、見逃せません。
本作で主人公の少年剣士・仁兵衛らが対決することとなるのは、通常の数百倍に巨大化し、人間を襲う蟲。
蜘蛛、天道虫、蜻蛉、蟷螂――いずれも我々の身の回りにごく普通にいるものばかりですが、それが巨大化し、敵意を持って襲いかかってきたとき、果たしてどうなるか…
単なる(?)妖怪変化ではなく、一定の現実感を備えた存在を敵役に据えたところに、本作の面白さの一つがあるかと思います。
それに抗する新中町奉行所、通称・蟲奉行所の面々は、蟲狩の天才剣士に少年陰陽師、五百人斬りの剣士に爆薬使いのくノ一と、いずれも個性的な面々。
この巻では、新米同心である仁兵衛が、彼ら一人一人と接し、少しずつ、蟲奉行所の仲間として認められていく様が描かれます。
個人的には、この仁兵衛の頑張りはまだまだ空回り、熱血というよりは無神経な猪武者(時に本来は大罪人である五百人斬りの剣士とコンビを組んだエピソードの言動など)のが不満なところ、まだまだ師匠である藤田先生には…という印象があります。
しかしここはおそらく、これから仁兵衛が真の武士として成長していくためのステップということなのでしょう。まずは見守ることとします。
ちなみに蟲奉行所のリーダー格である剣士・無涯は、退治した巨大蟲のパーツを使って、色々な武具を造り出す「蟲狩」の出身とのことですが…これ、つまりは「モンスターハンター」ということでしょうか。
いつかは時代ものでもやってくれる作品があるかと期待しておりましたが、本作がその第一号かもしれませんね。
(考えてみれば、敵が全くのファンタジックな存在ではなく、一定の生態系に基づいた生物というのも、それらしいところであります)
「ムシブギョー」(福田宏 小学館少年サンデーコミックス) Amazon
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