「無限の住人」第26巻 追撃戦と潰し合いの中で
最終章もいいよ好調、前の巻で万次と尸良の死闘に決着がつき、本当に久々に万全の体調となった万次ですが――ここで物語は、街道を行く逸刀流残党と、彼らを追う六鬼団との対決へ移ります。
それぞれの想いを胸に旅立った万次・逸刀流・六鬼団――この三者の戦いは、完全に追撃戦&潰し合いのトーナメントバトルに突入。まさに時代エンターテイメントの王道が繰り広げられることとなります。
この巻の前半でまず描かれるは、逸刀流・果心居士と六鬼団・花組の伴六&杣燎の、山中を舞台とした死闘であります。
バトルものは組合せが命…というのは私の密かな持論ですが、今回は、その組合せの妙が十全に発揮された印象。
山に仕掛けた幾重もの罠で奇襲を仕掛ける果心居士と、時代劇としては規格外のガンアクションを見せる伴、人並み外れた軽捷さの燎――この三者それぞれの戦法が組み合わさった対決は、単に腕比べ術比べに留まらぬレベルの戦いが展開されるのが実によろしい。
そして後半は、逸刀流重鎮・阿葉山老と逸刀流見習い剣士たちを追う六鬼団との攻防戦。
こちらは一転して、相手の手札が見えない状況下で、互いの出方を窺いつつの一種の心理戦的要素が加わった展開となるのがまた面白いのです。
特にここでは、逸刀流の唯一のルールである「一対一で戦うこと」が、ここに来て重要な要素となり、両者の読み合いが展開し、その中で双方のドラマが展開していくのには感心させられました。
それにしても、物語もここまで進んでくると、どのキャラ、どの陣営にもそれなりの愛着が湧いてくるもの。
そんな彼らが、一人一人脱落していくのは、トーナメントバトルの宿命とはいえ、何とも悲しく感じられます。
(最終章から登場した六鬼団も、今回の伴のようにいい味を見せてくれるキャラがいるので油断できない)
アクション描写も、心情描写も定評ある本作ですが、それがトーナメントバトルという王道展開と見事に組み合わさった時の破壊力が、これほどのものとは…と、今更ながら感心している次第です。
にしても、こんな展開の中で、微妙に微笑ましいラブっぷりを見せる万次と凛ェ…(いや、直前まで大変でしたけどね)
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