「デアマンテ 天領華闘牌」第4巻 そして金剛石は輝き続ける
長崎を舞台に、父を無実の罪で失った少女・かなと、長崎奉行の密偵・金剛太夫を主人公とした時代サスペンス「デアマンテ 天領華闘牌」も、この第四巻でめでたく完結であります。
自分の兄であり、主でもある長崎奉行に逆らい、かなとの愛を選んだ金剛太夫の運命は…
自分の父を死に追いやった事件の真相を暴いたものの、時既に遅く父の名誉回復はなされなかった、かな。
それでも表面上は穏やかな生活を取り戻すかに見えた彼女ですが、しかしそれよりも、金剛太夫の傍にいるため、丸山遊郭に戻ることを選び、太夫もそれを受け容れます。
しかしそれは長崎奉行の意に逆らうことであり、長崎奉行の密偵という傘あってこその太夫にとって、命取りとなりかねない選択。
どう考えても暗いかなと太夫の将来は…という、実に気になるところで第三巻は終わったわけですが、この最終巻においても、まだまだ重い展開は続きます。
武士の子でありながら、妾腹であったため悲惨な生活を送っていたところを、兄に救われ、男でありながら花魁に扮してその密偵となった金剛太夫。
その仲間であり、隠密集団「闘牌」のメンバーである弥十、鋤、心臓もまた、それぞれに悲しく重い過去を持ち、半ば心ならずも、今の境遇に身を置く者であったことが、語られていきます。
そして、その過去の因縁に引きずられるように、一人、また一人と姿を消していく仲間たち。
太夫は、彼らの想いを背負い、長崎で行われてきた大規模な抜け荷組織の正体を知るのですが――
これから先は、物語の根幹に関することゆえ、細かくは述べられませんが、太夫はここで、自らの人生を、いや自らの魂を賭けた選択を強いられることとなります。
自らの正義を信じ、そこに命を賭するべきか、はたまた、自らの意志を殺しても、安寧な暮らしを得るべきか?
この選択を太夫に突きつけた者は、こう語ります。
「自らの正義に囚われる人間は、それに殉じて滅ぶのみ」と…
その言葉の通り、本作で倒れていった幾多の人々。果たして、太夫は、かなは、その中に加わることとなるのか――
その選択の果ての結末は少々甘めではありますが、しかし、一つのお話としては納得のいくものでしょう。
たとえ自由と尊厳を奪われたとしても、己の信ずるものは捨てない――そんな誇り高き精神は、まさにデアマンテ(金剛石)と呼ぶべきもの。
その輝きは、江戸時代と現代と、時代を異にしても変わるものではありません。
「デアマンテ 天領華闘牌」、決して派手ではありませんが、美しく輝く良い漫画でありました。
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