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2010.08.04

「新選組刃義抄 アサギ」第3巻 両巨頭を襲う刃!

 ちょっと間が空きましたが、ガンガン系歴史漫画シリーズ。蜷川ヤエコ&山村竜也の新選組漫画「新選組刃義抄 アサギ」の第三巻です。
 いよいよ不穏な空気が高まる近藤派と芹沢派ですが…そこに、思わぬ事件が発生することになります。

 新兵衛&以蔵の人斬りコンビから松平容保を救ったことをきっかけに、京で順調な第一歩を踏み出したかに見えた試衛館組。
 しかし、芹沢鴨(二重人格者というのが実にややこしい)一派の横暴な振る舞いはいよいよ目に余るようになり…

 と、ここで普通の(?)新選組ものであれば、近藤一派の鴨暗殺に直結していくところですが、本作ではここに思わぬ展開を見せます。
 何とか手打ちの席を設けた近藤と芹沢が、それぞれ何者かに襲撃されるという事件が発生――当然(?)両派はそれぞれ相手方が犯人と睨み、その決定的な証拠を掴むため、奔走することとなります。

 そしてもう一つ、その事件の背後で進行するのは、実は長州の密偵である斎藤一と、前の巻でその外道ぶりを発揮した佐伯又三郎の暗躍…
 ことに、藤堂平助は佐伯が行った商家押し込みを芹沢の犯行と信じ込んだことから、事態はより一層、ややこしい状況になっていきます。

 この辺りの両巨頭襲撃事件を巡る物語の入り組み方は、これはこれで実に面白いのですが、個人的には、その物語の中に、それぞれの登場人物が埋没してしまったように見えて、あれほど個性的だった面々が、ずいぶんとおとなしくなってしまったような印象があるのが、残念ではあります。

 もっとも、紆余曲折の果てに暴かれた犯人の正体は実に意外である上に、山村先生の解説を見ると「なるほど!」と思わされるのですが…いや、ミステリ的にもフェアな展開で、これには感心いたしました。

 しかし、事件が解決してもすっきりしないのは、斎藤と佐伯に、一同がいいように振り回されるように見えることで…
 佐伯はともかく、斎藤にこの辺りの落とし前をどうつけさせるのか、というのが今後の展開の肝かもしれません。


 なお、今回すっかり存在が霞んでしまった以蔵は、巻末に収録された外伝の主役として、勝海舟や龍馬とのふれ合いが描かれます。
 こちらも、イイ話のようでいて、結末に苦いものを残す内容となっており、本編同様、一筋縄ではいかない味わいであります。

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