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2010.08.27

「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第8巻 秀吉の欲したもの

 諸般の事情で感想の方は一巻分飛ばしましたが、相変わらず快調の「義風堂々!! 直江兼続」第八巻。時は流れていよいよ秀吉が天下統一に王手をかける中、兼続と景勝の周囲にも時代の流れが押し寄せることとなります。

 天下統一を目前としながらも本能寺に消えた信長。そのおかげで窮地から辛うじて脱した上杉家ですが、天下の趨勢はむしろ一層混沌とした状況に。
 信長の後継者として秀吉と柴田勝家がしのぎを削る中、兼続は秀吉という男をより知るために、その腹心たる石田三成に接近します。

 と、実はこの巻のもう一人の主役は、この石田三成。
 三成と言えば、本作のスピンオフ元である「花の慶次」では、前田慶次郎(というか原作者の隆慶先生)にさんざんイジメられる損な役回りですが、しかし、その慶次郎の親友である兼続の親友であるという面白い関係にあります。

 もちろんこの時点では三人はほとんど他人(というより敵同士)というのが歴史の皮肉という感もありますが、何はともあれ、ここで兼続と三成の交誼が始まることとなります。

 もっとも、「漢が惚れる漢」兼続に対して、三成はまだまだ肩に力が入りすぎた優等生。しかも、以前秀吉が越後を攻めた際に、他でもない兼続に痛めつけられた過去があるわけで…

 まあ、結論から言うといつもの調子で兼続は仲良くなってしまうのですが、今まで本作に登場した英雄豪傑たちとはまた微妙に肌合いが異なるキャラクターとして三成が描かれているのは楽しいものです。
(本当に面倒なツンデレぶりがいかにも「らしく」て良いのです)


 そして後半で描かれるのは、天下人となった秀吉との落水城での対決。
 本作の冒頭から幾度となく描かれてきた兼続と秀吉の関わりですが、その秀吉がついに関白に、事実上日本の最高権力者となってしまえば、今まで通りのやり方は通じません。
 しかも今回、こともあろうに秀吉はわずかな供回りで上杉の落水城に現れるという人を食ったやり方。ある意味、兼続のお株を奪うような致しようであります。

 そしてその秀吉の狙いとは、景勝から兼続をもらい受けること――
 秀吉が兼続の才を気に入り、配下に加えんと欲したというエピソードは人口に膾炙しており、意外性はない…と言いたいところですが、しかし本作では、その意味は異なります。

 本作における兼続は、実は謙信の遺児。その兼続を秀吉が手元に置くということは、越後の象徴の遺児を人質に取ったも同然ということ――
 なるほど、こういう展開があったかと感心すると同時に、それに対する兼続と景勝の反撃がまた「いかにも」でニヤリとさせられました。


 一方、その秀吉に屈する形となっている家康も、兼続の存在に注目し始めた様子。
 さらに次巻の予告では、あの真田幸村が登場するとのことで、まだまだ兼続の周囲はにぎやかなことになりそうであります。

 …幸村のデザインは「花の慶次」から変えて欲しいなあ。

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