「乱飛乱外」第8巻 届け、心の声!
お家再興を目指して悪戦苦闘を繰り広げる少年・雷蔵と、彼を護るくノ一たちの活躍を描く戦国ドタバタアクションラブコメ「乱飛乱外」の最新巻、第八巻が発売されました。
長きに渡ってきた雷蔵の戦いもいよいよ終盤か、ここに来て事態は一挙に動き出します。
伊賀のくノ一たちの頭領争いに巻き込まれ、その中で伊賀の姫君・おろちに見込まれてしまった雷蔵。
頭領争いの最後の試練は秘術・神体合勝負、その相手は雷蔵に仕えるかがり――おろちもかがりも、二人とも8雷蔵を念者(媒介)としての秘術・神体合を会得して、力の上では互角…
というところまでが前の巻で描かれましたが、最新巻の冒頭で描かれるのは、神体合の術者同士の決着戦であります。
この神体合、接吻を交わした想い人に見つめられることで、防御力・腕力・回復力etc.で無敵の力を発揮するという術。
物語冒頭で描かれてきたこの術は、雷蔵とかがりの絆を象徴する術であり、これまで幾度となく雷蔵たちを救ってきたものですが、その術同士がぶつかった時に勝負を分けるのは、想い人への想いの強さであるのは言うまでもない話。
その意味では、かがりの勝利は当然のものと見えるのですが、ここで思いも寄らぬどんでん返しが…
こちらもすっかり忘れていたようなある事実が、ここに至ってとんでもない効果を発揮、さらに間の悪いことに、かねてからかがりを狙ってきた宿敵・冠木星眼の配下・百花忍群により、彼女は連れ去られるのでありました。
そしてそこに駄目押しとばかり、雷蔵に仕掛けられる死の罠――
相手のトラウマを極限まで拡大し、己を自死に追い込む恐るべき忍法「鏡地獄」の前に、雷蔵は死の一歩手前まで追い込まれます。
(しかし、この悪夢の中で雷蔵にかけられる言葉は、多かれ少なかれ、我々読者が思っていたことなのがおかしいというか何というか)
…しかし、ここからクライマックスに向けて燃える展開の連続。
雷蔵のトラウマが、これまで出会ってきた四人の姫君に振られた(と思いこんでいる)ことであれば、そこから彼を解き放つことが出来るのは、姫君たちの心の声のみ!
かくて、雷蔵の心を救うべく、懐かしの姫君たちが総登場。これまでの雷蔵の旅の意味、彼の存在の意味が、改めて語られることとなります。
この辺り、お約束と言えばお約束、良いご身分と言えばそれまでかもしれませんが、しかし、無駄だったと思いこんでいた自分の努力が、実は無駄ではなかったというのが証明されていくといのは、実に泣かせる展開ではありませんか。
そして復活した雷蔵は、己の想いをかがりに直接、自分の口から告げるべく旅立ちます。
向かう先は星眼の居城――しかし、そこに待ち受けるのは、無数の術者たち。それを打ち破ることができるのは、雷蔵が手にする術を斬る力を持つ、隠切の太刀のみ!
と、幾つもの意味で、雷蔵が、雷蔵のみが最後の戦いに向かう必要があるというシチュエーション作りの妙も、心憎いばかりであります。
そして、その一方で、囚われの身となったかがりの側でもドラマが展開。
実はかつて神体合の念者候補であった星眼が神体合を手にするためにさらわれたかがりですが、その天真爛漫さ、一途さに、いつしか星眼も惹かれていくことになります。
全ての女性を道具と見なし、意のままに操る力を持つ星眼。そんな彼が、かがり一人に翻弄され、いつしか愛されることの意味を考えるようになるという皮肉さが実に面白く、かがりを挟んだ雷蔵と星眼の対決が、今から楽しみなのです。
正直なところ、これまでしばらくはワンパターンな展開と雷蔵の不甲斐なさに、残念さを感じていたのですが、それもこの展開のためだったか? と思ってしまうような盛り上がり。
このテンションで一気にラストまで走り抜けてもらいたいものであります。
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