「THE 八犬伝 新章」 第三話「妖猫譚」
庚申山で夜を明かす現八は、そこで猫の顔の怪人に襲われ、相手の片目を潰して逃げる。麓の村で犬村角太郎と出会い、彼も犬士であることを知る現八。角太郎の父・赤岩一角の言動に不審を持ち、道場に殴り込んだ現八は、一角が片目であることを知り、その場から逃げ出す。角太郎と雛衣を呼び出した一角は、片目の薬として雛衣の腹の子と彼女の心臓を要求、雛衣は己の潔白を証明するため腹を切るが、そこから犬士の玉が現れる。角太郎が掲げる玉の光に怯む一角=妖猫を現八が倒し、二人は雛衣を弔って旅に出るのだった。
「THE 八犬伝 新章」第三話のサブタイトルは「妖猫譚」。原作読者であれば言うまでもなく気付く通り、今回のエピソードは庚申山の妖猫退治、最後の犬士・犬村角太郎(大角)登場編であります。
前回の小文吾同様、仲間とはぐれて放浪する現八が訪れた下野国庚申山。そこで鼠を食い散らかす猫顔の怪人と遭遇した現八は、不思議な声と人魂に導かれ、かろうじて逃げ延びます。
そして麓の村にやってきた彼が目撃したのは、美しい女性が、草庵に籠もる誰かに必死に言葉をかける姿。これこそ夫・犬村角太郎に妻・雛衣が己の潔白を訴えかける姿であります。
角太郎の父・赤岩一角は、庚申山の妖猫退治に出かけて以来、人が変わったようになり角太郎を勘当。一方、角太郎の幼なじみであり妻となった雛衣は、彼が接しないのに腹が膨れたことから姦通の噂を立てられ、離縁されたのでした。
雛衣の言葉にも庵から出ようとしない角太郎に怒った現八は、強引に門を蹴倒して中に乱入(この辺り、本作の現八さんらしくて最高)、対面した角太郎の目に光るのは…涙!?
一方、角太郎の方は現八の持っている玉と頬の痣を見て驚いた表情を見せます。彼もまた、玉と痣を持っていたのですから――
そして現八の道場殴り込みを経て、クライマックスは一角の家での悲劇であります。
一角に招かれた先で角太郎を待っていたのは、一角と後妻の船虫(!)、そして雛衣。
勘当を許し、雛衣と娶すことを許すという一角と船虫は、一つの条件を出します。それは、一角の目の薬となる赤子の生き肝と母の心の臓…
あまりの残酷な言葉に思考停止状態の角太郎ですが、しかし雛衣は気丈に己の腹に刃を突き立てます。
そこから転がり落ちたのは、角太郎の玉…今改めてこの世に生まれ落ちた玉の輝きは、妖猫一角を怯ませ、庚申山で現八を導いた謎の声――いや、真の一角の魂に励まされ、角太郎と現八は、妖猫を討つのでした。
(一方、船虫は前回同様、花びらに変化してその場から去り――やはり尋常の存在ではありません)
腹を切ろうとした角太郎は、雛衣の末期の言葉に思いとどまり、現八は彼に、全ては宿命の糸に操られているのかもしれないと語るのでありました。
と、今回はかなりストレートに原作を映像化した印象。
原作から省略された部分もありますが、妖猫との対決という派手な内容を生かしつつ、ほぼ忠実に再現していたように思います。
…が、そうなると目立つのが角太郎の不甲斐なさ。原作よりも人間味があるキャラクターには描かれていましたが、それだけにクライマックスで雛衣に腹を切らせてしまうシーンは、ただオロオロしていただけに見えたのが残念です。
この「罪」を、角太郎が如何に背負い、昇華していくのか――ここは今後のドラマの見せ所、と言いたいところですが、監督も脚本家も変わった後となっては、どこまで期待できるか…と、いささか悲観的になります。
そんなドラマで一人活き活きと活躍していたのはやはり現八さん。
前シリーズ第一話でも作画監督を担当した橋本晋治氏の画は、どこかユーモラスなのですが、それがこの現八にはよく似合います。
(特に角太郎が悪夢に悩まされる横でモリモリ飯を食っているシーンが異様におかしい)
そんな彼の口から宿命という言葉が出るのは少々意外ですが、それだからこそ…と言うべきなのでしょうか?
ちなみに一角と角太郎を演じたのは実の父子というのもちょっと面白いですね(信乃を演じていたら大塚と犬塚でちょっとややこしくなっていたかも…)
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