「THE 八犬伝 新章」 第二話「対牛楼」
一人放浪する小文吾は、名笛・芳野の袋が荷物に入っていたことから、千葉家の家老・馬加大記に捕らえられる。疑いが晴れて放免され、対牛楼で催される宴に出た小文吾。そこに侍っていた旅芸人の旦開野の正体は、かつて父を大記に殺された犬坂毛野だった。大記の幼い子にも向けられた毛野の復讐の刃を止めようとする小文吾。大記は対牛楼の崩壊に巻き込まれ、毛野は止めに入った丶大、そして小文吾とともに旅立つのだった。
ここから脚本家も変わり、ある意味ここからが新章という印象の「THE八犬伝 新章」、今回のサブタイトルは「対牛楼」…ということで、ようやく七人目の犬士・犬坂毛野の登場編であります。
前回道節がやらかしたおかげでバラバラになった犬士たちの一人・小文吾が一夜の宿を借りた家。その家で小文吾を待っていたのは原作ファンはお馴染みの毒婦・船虫であります。
そこで枕探しをする男を斬ってみればそれは何と網干左母次郎。原作では並四郎という悪人でしたが、さてこれはただではすみそうにありません。
翌朝、口止めのつもりか、家宝の笛だという芳野を差し出そうとする船虫を押しやって出発する小文吾ですが…
気づけば笛の袋は小文吾の荷物の中に。それを目にして声をかけるのは、美しい旅芸人・旦開野。しかし彼女と言葉を交わす間もなく、小文吾は船虫の讒訴で馬加大記に捕らえられてしまいます。
が、笛の包みに入っていたのはただの木の棒…おかげで放免された小文吾ですが、船虫はそのことを詰問しに来た大記と配下の籠山逸東太に対し、栗飯原胤度の遺児が命を狙っていることを吹き込むと、桜の花と化して消えるのでありました。やはりこちらもただの人間ではありませんでしたか…
大記の子供に気にいられたことから屋敷に留められた小文吾は、その晩、大記の屋敷の離れ・対牛楼で催される宴に顔を出しますが、そこに侍っていたのが旦開野。
そこで舞う前に旦開野が取り出したのは消えたはずの芳野。彼女が吹く笛に呼応するように、対牛楼が震え出します。
そもそも、この笛は一対のうちの一本。かつて、千葉家の主席家老・栗飯原胤度により古河に献上されようとしたこの笛を奪おうとした大記は、胤度を殺してその一本を奪ったのでありました。
そして言うまでもなく、旦開野こそは胤度が遺児。彼女、いやさ彼こそは犬坂毛野! というわけで、まずは逸東太を血祭りに上げ、無茶苦茶な強さで当たるを幸いなぎ倒し…
と、この辺りまではほぼ原作通りではありますが、今回のキモはある意味ここから。
対牛楼に居合わせた大記の子供。毛野にとっては言うまでもなく、彼も仇の一族であり、殺すべき相手――しかしもちろん、それを見過ごしにできる小文吾ではありません。
己の刃で毛野の刃を受け止める小文吾。刃越しににらみ合う二人の犬士の激突の背後に浮かび上がるのは、あの赤い橋。そしてそれを面白げに見物するのは、網干と船虫。
いつしか毛野と小文吾の戦いは、その赤い橋の上に移り――やはりこの橋は、人間(性)とそれ以外を分かつものなのでしょう――さあ、果たしてこの戦いはどうすれば止められるのか!?
と思っていたところに割って入ったのは丶大法師。丶大法師の振るう錫杖は、二人の刃を叩き折り、その様を目にした網干は、珍しく狼狽えた様子を見せます。
原作に比して、これまでほとんど全く出番のなかった丶大がここで活躍したのには失礼ながら驚きましたが、ここでの描写を見るに、彼もまたただの人間ではなく、網干らと同様の、しかし反対側に属する存在なのかもしれません。
さて、網干は笛を手にして消え、大記は崩壊する対牛楼の中に滅び…一人残って廃墟の中で泣く大記の子に対し、毛野は言葉をかけます。早く大きくなって私を討ちに来いと…
ある意味(どちら側にとっても)甘々な結末ではありますが、これはこれで一つの結末でしょう。
本懐を果たした毛野は、丶大や小文吾とともに去ってこの回は終わります。
しかし、本作ではありませんでしたが、今だったら絶対毛野に迫られて小文吾ドキドキ展開があるでしょうに…いや、原作にもある展開ですし。
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