「THE 八犬伝 新章」 第六話「欣求浄土」
素藤討伐に向かう義実の軍に加わることになった八犬士。しかし素藤の築いた堰により、里見軍の大半は川の水に押し流されてしまう。親兵衛は逆に堰を爆破することにより、素藤の砦を潰す計を案じる。しかし浜路救出のため信乃と道節は砦に潜入し、堰の爆破を巡り、八犬士同士が対立する。争いの末、親兵衛が火薬に火を付けた時、網干の嘲笑が響く。空には、砦から滝田城に掛かる赤黒い橋の姿が浮かんでいた…
いよいよ揃った八犬士。挑むは、山下定包の怨霊である網干を後ろ盾にした蟇田素藤であります。
彼らにとっては霊的な祖父と言うべき里見義実とも目通りを済ませ、里見軍の一員として戦場に向かう八犬士ですが…
しかし彼らの胸中は様々。親兵衛が無邪気に素藤討伐を口にする一方で、信乃と荘助にとっては、素藤にさらわれた浜路――実は義実の娘、浜路姫――が気にかかる。
現八は浪人でなくなることを喜んでいますが、既に家を滅ぼされた経験を持つ故が道節はそれに冷笑的で…
考えてみれば、玉と痣という共通点こそあれ、ほとんど流されるままに集められた彼ら。しかも、その半数以上は互いに初対面という状況であります。
これで仲良く、しかもほとんど他人同然の里見家のために頑張れと言われても土台無理な話でしょう。
しかしそんな彼らの中でもひときわ異彩を放つのが、親兵衛であるのは言うまでもありません。
原作でもそうでしたが、知力体力ともに親兵衛の能力は反則級です(村雨を賭けた信乃との腕相撲勝負であっさり逆転勝ちしてしまういやらしさ!)。
しかも性格は超生意気の上に、里見家のためという目的のためには手段を選ばないといいう有様。
浜路が砦に囚われているにもかかわらず、河をせき止めた堰を爆破して、砦を押し流そうというのですから…
しかし、後に小文吾が指摘するように、親兵衛のこの信念は、どこから生じたものなのか…伏姫に誘われて異界に消えた親兵衛ですが、そこで何があったか――そして伏姫は本当に里見の味方なのか、ということすら頭に浮かびます。
そして、この砦を巡る八犬士それぞれの行動こそが、今回のハイライトとも言うべき部分であります。
浜路を救うため、単身砦に乗り込む信乃。
信乃を助ける…というより浜路のために彼に同行する道節。
彼らが戻るまで堰の爆破を伸ばそうとする荘助。
荘助とともに親兵衛を止めるため刃を向ける現八。
両者の間に割って入るも、親兵衛に斬られて激高する小文吾。
親兵衛の指示に冷静に従おうとする毛野。
どちらにつくべきか迷い、その場で座禅を始める大角。
里見に仇なす者を成敗するという大義に取り憑かれた親兵衛。
この場面は本作オリジナルではありますが、なるほど、八人の個性が良く出ていると――彼らであれば、こういう行動もあるいはあり得ると感じますし、短い中でこれを凝縮して見せた今回の構成には感心いたします。
しかし、親兵衛の手によりついに堰は爆破され、駆けつけた信乃と道節の前で、網干・素藤・浜路は赤い橋の向こうに姿を消してしまいます
そして砦から義実の滝田城にかかるのは、巨大な赤黒い橋…
網干たちの真の狙いは、そして八犬士たちの存在の意味は――いよいよ次回完結であります。
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