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2010.11.15

「幕末めだか組」第4巻 阻め、将軍暗殺

 連載の方は惜しくも先日終了した「幕末めだか組」の第4巻であります。
 第3巻の後半で描かれた水戸脱藩浪士の陰謀がついにその牙を剥き、その中に海軍操練所・癸組、通称「めだか組」の面々も否応なしに巻き込まれることとなります。

 海軍操練所周辺で連続する怪事件。その背後で暗躍する水戸脱藩浪士の真の狙いは、操練所の視察に訪れる将軍・家茂の暗殺でありました。
 視察の際に礼砲を放つ予定の砲台を占拠し、礼砲の代わりに実弾でもって家茂や海舟の乗る蒸気船を砲撃する――一見乱暴ではありますが、しかし、一種盲点をついたこの暗殺計画に巻き込まれたのが、主人公をはじめとするめだか組…という展開であります。

 砲台に火薬を運ぶことになったものの、偶然砲台の役人(実は入れ替わった浪士たち)が偽者であることに気付いてしまったことから、浪士たちに捕らわれてしまっためだか組。
 もちろんこのままでは口封じに殺されることは必定、いや、彼らだけでなく、家定の命も…
 この二重の危機を如何に切り抜けるかが第一の山場ですが、しかし真のクライマックスはこの後から。

 辛うじて暗殺は阻んだものの、浪士一味は逃走のため、あろうことか操練所の帆船を奪い、その人質兼運転役に選ばれてしまったのがめだか組…
 安全な土地まで行けば解放するという約束であっても、もちろん浪士たちがそれを守るという保証はなく、さらに後ろから、浪士たちに恨みを持つ土佐の軍船が追ってくる中、めだか組の生き残りを賭けた戦いが始まることとなります。

 正直なところ、この辺りの展開は、海上に逃げた浪士組を、めだか組が(性能の劣る帆船で)追うような展開になるのかな…と予想していたため、かなり意外かつ、いささか不満――二連続で人質というのは正直あまり格好良くないわけで――ではありました。

 とはいえ、フィクションの世界でもそれほど多くないシージャックネタを、それも時代ものでやってしまおうというアイディアは、実に面白いですし、大いに評価するべきでしょう。
 そして、追いつかれても逃げ切っても死が待つという状況下で、彼らなりのやり方で逆転に持ち込むめだか組の活躍には、やはり読んでいてテンションが上がりました。

 しかし、悪人の陰謀を阻んでバンザイ、とはならないのは、やはり幕末ものらしいところ。
 事件の中、幾度となく繰り返されるめだか組と浪士たちの対話の中で浮かび上がる、どうしようもないすれ違いと不寛容の姿は、極端なものとはいえ、この時代というものの一面を、確かに切り出したものなのでしょう…

 そして、物語冒頭から主人公のトラウマとして語られてきた鴨池丸事件の名が、ここで浪士の口からも語られることとなります。

 果たしていかなる事件なのか――それはまだまだ最終巻である次巻まで引っ張られることとなりますが…さて。


 ちなみに第3巻の感想で、その存在感がめだか組にとってはマイナスに働くのではと心配した龍馬ですが、今回の事件の中では、めだか組を助ける兄貴分として、目立ちすぎず埋没しすぎず…
 と、助演男優ぶりを遺憾なく発揮。こういう使い方は良いですね。

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