「戦国ゾンビ 百鬼の乱」第5巻 人間とゾンビを分かつもの
戦国バイオレンスアクションホラー地獄絵図「戦国ゾンビ」もこの第五巻でついに完結。
武田信勝を守る赤葬兵の戦いもこれでラスト、最後の最後まで気の抜けない文字通りの死闘が繰り広げられます。
武田勝頼の遺児・信勝を守り、ゾンビと織田・徳川の連合軍が入り乱れる中を駆け抜ける赤葬兵たち。
しかし、天目山を抜け、唯一の安全地帯である越後の離れ小島へ向かう中で、一騎当千の彼らも一人、また一人と斃れていきます。
残る赤葬兵は四人…しかし彼らも乱戦の中で引き離された上、信勝も徳川の暗殺部隊・刻怨軍に奪われるという窮地に。
そして主人公格の土屋昌恒も最強の敵、ゾンビよりも恐ろしい本多忠勝と対峙することに…
といったところから始まるこの最終巻。実は前の巻の感想で、かなりテンションが落ちた、この先盛り上がるのか、とずいぶん失礼なことを書きましたが、私の目が節穴であることがはっきり証明されました。
いやもう、物語の掉尾を飾るすさまじい盛り上がりであります。
物語的にはゾンビの正体と蔓延の理由が明かされ、ほとんど物語上の謎や秘密は語られてしまった感があります(もう一発、もの凄い秘密があるのですが…)。
こういう状況で果たして何を描くのだろう…と思えば、それはもう戦いのみ!
この最終巻では、最初から最後までバトルバトルバトルの連続。人間vsゾンビ、人間vs人間、そして…
赤葬兵が、これまで彼らが出会ってきた者たちが、それぞれの戦場で、それぞれの死闘を繰り広げます。
そう、それはまさに死闘。
生ける死者に対するに、自らも死線を越え…命懸けなどという言葉では生ぬるい、己の命そのものをぶつけ、一人また一人散っていく赤葬兵たちの姿は、本作が人の生き死にの描写に全く容赦がないだけに、心に突き刺さります。
その一方で、このうち続く死闘の中でこちらの頭に浮かぶのは、一つの疑問――戦場で命を奪い、奪われる人間と、ゾンビとどれほどの違いがあるのか…と(この巻の展開を見るとなおさら)。
しかしその疑問に、本作は、一つの明確な答えを、赤葬兵たちの姿を通して語ってくれます。
それは、人間には――いや、武者には、戦う理由と意志がある、それに尽きます。
本作を通して最も成長を遂げた昌恒の弟・正直のクライマックスでの叫びは、まさにその現れと言うべきでしょう。
そしてそこに、本作が、戦国時代を舞台にゾンビを暴れさせた理由もあるように感じるのです。
さて――ホラー映画にはお馴染みの、エンドマークの後に、ギョッ! というあれが、実は本作にもあります。
それも、爆弾級のインパクトを持つものが…
まだまだ戦国の地獄は終わらないのであります。
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