「無限の住人」 第十一幕「羽根」
アニメ版「無限の住人」も気がつけば残すところあと3話。今回は川上新夜編の後編「羽根」であります。
冒頭で描かれるのは、幼い頃の凛と祖父の姿。
破門された天津の祖父のことを思い出しながら、仮に自分や親に何かあっても相手を恨むな、復讐を行えば今度は相手の子孫が恨みを持つだろうと、凛の祖父は語ります。
その復讐を戒める祖父の言葉も空しく、いま凛が万次とともに歩むのは両親の復讐行。
しかし、ついに母を汚した張本人・川上新夜と出会ってみれば、新夜は父の所業を知らぬ息子・錬造と暮らしていたという皮肉――
もちろん新夜も、凛が浅野道場の遺児であることは先刻承知。
その自分をどうするかと訪ねる新夜に、錬造のただ一人の肉親である新夜を斬ることはできないと凛は答えるのですが…
しかし、殺さない代わりに詫びろというのは、これはいかに世間知らずの娘の言葉といえいかがなものか。
案の定、この世に人の命を購えるものがあるとすればそれは人の命のみだと、凛を嘲笑う新夜は、手を突いて詫びるふりをして凛に襲いかかり、(それを予期していたにも関わらず)凛は意識を失う羽目になってしまいます。
ここで「この面だけは剥がされるわけにはいかない」とうまいこと言いながら、しかしすぐに凛を始末せず、凛の体に血化粧を加え、その出来映えを満足げに寛賞する新夜もまた、ずいぶんとおかしな行動をするものですが…(芸術家気質とはいえ、ねえ)
ちなみにこの場面、明らかに凛の母がされたことと同様に「体を蹂躙すること」の暗喩。
その少し前、凛との会話中に、新夜が凛の体にメイクするところを想像するというシーンもあって、こういう形で描いてみせるというのには、感心いたします。
閑話休題、そんなことをしているうちに万次は窓から新夜の家に入り込み、凛を救出――
するのですが、ここで突然万次を前に部屋の箪笥を動かし始める新夜と、それを手伝わされる万次というよくわからない展開になってしまいます。
どうやら新夜は狭い空間での戦いを得意とするらしく、燭台で固定された箪笥によって分断された部屋の中で、万次は新夜に翻弄され、次々と武器を奪われた末に新夜に押さえつけられ、また新夜は血化粧を始める始末であります。
この場面、新夜も万次の弱さに呆れるのですが、それは見ているこちらの台詞。
凛といい新夜といい万次といい、今回の登場人物はどこか変で、復讐/償いと家族という重たいテーマが、正直台無しになっている感は否めません。
結局、万次が窓から入る時に使って外に刺しっぱなしになっていた刃によって新夜は敗れ、凛の制止むなしく万次によってとどめを刺されることとなります。
そしてその場に帰ってきてしまった錬造は、万次を刺し…万次が死んだと錬造が信じたところで、このエピソードは終わります。
原作ではちょうどこの辺りからストーリー志向と言いましょうか、派手な剣戟よりもドラマ性を重視する過渡期にあったかと思いますが、上記の通り内容的には疑問符が付く内容。
原作では「ちょっとおかしいな」と思いつつ、絵の力で読まされましたが、このアニメでは「だいぶおかしい」になってしまったのは、これは何のためなのか…さて。
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