「無限の住人」 第十幕「變面」
アニメ版「無限の住人」もいよいよ終盤。第十幕「變面」は、川上新夜編の前編、運命の皮肉か、凛が思わぬところで怨敵と出会うこととなります。
万次と二人、縁日を訪れ、年頃の娘らしく振る舞う凛が並んでいた屋台に割り込んできた少年・錬蔵。
一方、年頃のおっさんらしく全く女の子の心のわからない万次(一見ギャグシーンのようでいて、縁日の光景を、自分にとっては水の中の景色のようだと呟くのが興味深い)は、独特のセンスを持った面作りの男・川上新夜と出会います。
この新夜、実は逸刀流の一員。
万次とここで対面したのは偶然ではありますが、しかし逸刀流にとって万次と凛は既に無視できぬ敵、出会えば即斬るべき間柄、というわけでまさに一触即発となったその瞬間――そこに錬蔵が現れたことから、新夜は刀を引きます。
実は錬蔵は新夜の息子、妻に先立たれた(それ以前に一度逃げられた)新夜は、親一人子一人の暮らしを続けていたのでありました。
が、その新夜の顔を見た凛は、これまでにない憎悪の表情を浮かべるのですが…
そして翌日、錬蔵が破落戸に絡まれる場に居合わせた凛は、己が嘲られるのも構わず錬蔵をかばい、その場を収めることに。
(この時、凛の着物の裾が、破落戸の足にまさぐられるシーンが無駄にエロい。アニメ化の成果?)
礼をするという錬蔵について、凛は一人、敵の一人である新夜のもとに赴くことになります。
凛がかつて自分たちが襲撃した浅野道場の一人娘と知ってか知らずしてか、己の身の上を語る新夜。
かつては散々剣士としてやんちゃもしたけれど、逃げた妻が病で死んで錬蔵一人残ったことから、新夜は剣士を引退したとのことですが――「親が危ない橋を渡っていると、子供もいずれ似たような道に踏み込む」という言葉が、その後の錬蔵の運命を考えれば皮肉どころではないのですが、それはさておき。
そして凛の両親のことを聞く新夜に、淡々と凛が両親のことを語り始めたところ(そして凛を追って万次がヘンなBGMと共にずんずん歩くところ)で、今回は幕となります。
と、実はほとんどアクションらしいアクションのなかった今回。
万次の刀が抜かれたのも、面を加工する新夜に刀を貸した時と、凛の行方を聞き出すため、屋台をブチ壊した時のみという地味な回であります。
実のところ、原作でもこの新夜編辺りから、どんどん人間ドラマ主体の展開となっていくので(見開き解体シーンがなくなるのもこの辺りから)、原作に忠実な展開ではあるのですが、しかし今回はその分、キャラクター描写と声優の芝居に集中することができたかと思います。
まだ後編があるため、ここであまり語るのも難しいですが、新夜の初登場シーンは、同じ面を欲しがる幼い兄妹に柔らかく語りかけてその場を収めるという、不思議な人間味を感じさせるもの。
錬蔵のために逸刀流から足を洗おうという点も合わせて、穏やかな人物にも見えますが…
そしてその新夜を激しく憎む凛(その因縁を語り始めたところで終わるのもうまい)が、彼を前に淡々と語り始める辺りの佐藤利奈の語りもなかなかよろしく、次回の爆発が期待できそうです。
と、声といえば、途中に出てきた妙に陰気な声の風車売り、原作者だったんですね…
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