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2010.12.04

「友を選ばば」 快男児と剣侠児、出会いの時!

 三銃士との冒険から十年後、無聊な日々を過ごすダルタニャンは、イギリスの司法関係者から、凶悪な盗賊スカーレット・ルピナス団捕縛への協力を依頼される。二つ返事で引き受けたダルタニャンは、勇躍海を渡るが、その前に隻眼の東洋人剣士ウィロウリヴィングが現れる。果たして彼は敵か味方か…?

 私事で恐縮ですが、子供の頃、「三銃士」が大好きでした。
 勇猛果敢にして友情に厚く、ユーモアを忘れない。そして何よりも己の誇りと信念のためであれば、稚気に満ちたことでも胸を張ってやらかしてしまう…
 そんな痛快男児たちの中でも、三銃士の後輩格として仲間に加わり、めきめきと頭角を現していくダルタニャンの姿には、親しみと憧れを大いに感じたものであります。

 長ずるに従って関心は我が国の時代ものに移り、一片の義心を抱き、ただ一剣を抱いて、屍山血河の修羅の世界へ、わきめもふらず馳せむかう剣侠児が私のヒーローになったわけですが…

 自分語りが長くて恐縮ですが、そんな私にとって、この作品はまさに夢のような存在であります。
 仏蘭西の快男児と日本の剣侠児の出会い! これほど胸躍る顔合わせがありましょうか?

 本作については、先日の荒山徹トークセッションでの予告を耳にして以来、心待ちにしていたのですが(その時とは題名が一部変更になりましたが、これはこれで一種のネタバレ防止として必要でしょう)、期待通りの、いや一部予想もつかぬような作品でした。

 かの「三銃士」から「十年後」、銃士隊副隊長に就任しながらも、傍らにかつての親友たちがいないことに空しさを隠せないダルタニャン。
 そんな彼にとって、イギリスからやってきた司法関係者に助太刀して、凶賊スカーレット・ルピナス団と対決してほしいという依頼は、久々に己の腕前を存分に振るえるものかと思われたのですが…

 イギリス全土を震撼させたというスカーレット・ルピナス団が現在狙っているのは、各地の古代遺跡に眠る、キリスト教流布以前の時代の遺物。
 ダルタニャンは、ブルターニュの、そしてブリテン島の遺跡に出没する賊を追い、奮闘することになります。

 が、その前に現れたのは、団の一員と思しき隻眼の東洋人剣士ウィロウリヴィング(それにしても露骨な名前ではあります)。
 自分と互角以上の腕前を持つ謎の剣士と、幾度となく剣を交えるダルタニャンですが、しかし、彼の行く手には意外な罠と、恐るべき陰謀が――

 ここから先の展開は、色々と面白すぎるのでぜひ実際の作品をご覧いただきたいのですが、もちろんダルタニャンとウィロウリヴィングの対立は一時の誤解。
 よく見てみれば互いに似たもの同士の二人、たちまち胸襟を開いて、君僕で呼び合う無二の親友となり、共に全欧州を――いや、全世界の危機に立ち向かうこととなるのですからたまりません。

 もっとも敵の目的というのが、朝鮮と欧州と場所こそ違え、荒山作品ではある意味お馴染みなものなのには苦笑しましたが、しかしその背後にいる存在がとんでもない。
 荒山作品には何度かそれらしいものは登場していたやに記憶していますが、ついに禁断の果実に手を出したか…と感じると同時に、日仏のヒーローに対抗するには、これくらいは必要か、と納得もしている次第です。
(もっとも、トークセッションの段階である程度予想は出来たことではありますが…)


 さて、本作は最近の荒山長編としては、分量的にも、題材的にも文体的にも(もっともこれはそれ自体がパロディのようですが)かなりあっさり目の作品ではあります。

 しかし、最近の荒山作品が、作品の途中で作品を構成する一アイディア・ガジェットに傾倒して方向性を見失いがちであったことを考えれば、シンプルに描くべきのみを描いた本作には好感が持てます。

 そのほかにも、ウィロウリヴィングがはるばる欧州までやってきた理由が今ひとつだったり(この辺り、帯は誇大広告というか解説しすぎ)という部分もあるのですが、しかし快男児と剣侠児の海を越えた握手の前には小さい小さい。

 いつかまた、このような夢の出会いが描かれることを――待ち、そして希望しましょう。

「友を選ばば」(荒山徹 講談社) Amazon
友を選ばば (100周年書き下ろし)

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