「忍風の白竜」 そして竜は風に乗る
昨日に続き、単行本未収録作品の紹介を。
今回は、1994年9月のコミックマスター24号に掲載された、長谷川裕一の「忍風の白竜」であります。
(内容の詳細に触れていますので、未読の方はご注意下さい)
時は天正元年、孫の千代美々と共に鬼首山に隠棲する忍術遣いの老人・幻幽斎は、山中で意識を失っていた少年を拾います。
場葉無宇人と名乗るその少年は、幻幽斎に弟子入りを望み、並々ならぬ才能を見せます。
そんなある日、近くの城の手の者に幻幽斎の小屋が襲撃を受け、千代美々がさらわれてしまいます。
実は千代美々は城の姫君。しかし城は西洋からやって来た悪魔の配下に乗っ取られ、彼女は幻幽斎の元で育てられていたのでした。
今、千代美々を生贄に奇怪な儀式を執り行おうとする悪魔。無宇人は彼女を救うべく、単身城に向かいます。そう、彼の真の姿は――
と、ばらしてしまえば、その露骨な名前からわかるとおり、無宇人の正体は、悪魔を討つべく神に遣わされた天界の白竜。
(冒頭には、巨大な悪魔との戦いに敗れた白竜が地に墜ちるシーンが描かれています)
クライマックスは、本来の姿を取り戻した無宇人が、巨大な悪魔を相手に、白竜姿で忍法を披露(!)するのですが、それさすがに忍法違う、というフィニッシュはともかく、忍者もののお約束の変わり身の術を巨体でやってくれるのは実に痛快であります。
そしてグッとくるのは、人間として修行中の無宇人の言葉です。
自分は、元々持つ力だけでどんな魔物にも負けないと思っていたがそれは思い上がりだった。力は自ら磨いてこそ自らの力になるのだと…
長谷川作品といえば、男の子ならグッと来る熱血展開、人間賛歌がほとんどの作品にちりばめられていますが、本作も万能であるはずの竜が、人間が生み出した技術を学ぶ過程で上の想いを抱く、というのが何ともいいではありませんか。
戦国時代を舞台に、巨大怪獣が激突するという内容自体は、まず間違いなく「仮面の忍者赤影」へのオマージュかと思いますが、こうした部分を見ると、やはり長谷川作品だな、と感じさせられるところです。
さて、結局本作自体は単発で終わりましたが、長谷川作品には私の知る限り時代ものが、「忍闘炎伝」と「聖忍者伝」の二作があります。
これらの作品は、いずれも戦国時代を舞台とし、西洋からやって来た悪魔に、忍者と聖なる力を持つ者が挑むという内容。
特に「聖忍者伝」は、悪魔との戦いに敗れた天使が、忍者の力を借りて再起するという内容で、ほぼ本作のリメイクと言っても良いでしょう。
もう10年以上もご無沙汰の長谷川時代劇ですが、そろそろリターンマッチを展開してくれてもいいのに…と、久々に本作を読み返して感じた次第です。
「忍風の白竜」(長谷川裕一 「コミックマスター」第24号掲載)
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コメント
コミックマスターはRPGマガジンの別冊なんですよね。確か大版になってからのRPGマガジンの日本ファンタジー特集号で、若き日の明智光秀が様々な特殊銃器を駆使して妖怪退治する読み切り短編が冒頭に書かれていたのを覚えています。もし発見されれば御一読をお勧めします。
投稿: ジャラル | 2011.02.16 21:49
ジャラル様:
うわっ、時代ものRPGが載った別の号は持っていたと思いますが、それは面白そうですねえ。確かに光秀は銃使いというのもアリですね
投稿: 三田主水 | 2011.02.19 01:49