「柳生無頼剣 鬼神の太刀」第2巻
若き柳生十兵衛と、徳川幕府壊滅を目論む異形の集団・常夜衆の死闘を描く「柳生無頼剣 鬼神の太刀」の第二巻、完結編であります。
辻斬り、押し込みと、江戸で次々と冷酷残忍な事件を引き起こしてきた常夜衆。
三代将軍家光と瓜二つの男・羅刹を戴くその集団を十兵衛は、真の新陰流の心技を身につけ、単身彼らに戦いを挑むこととなります。
しかし時既に遅く、決起した常夜衆は江戸を炎に染める一大テロルを敢行、その魔手は、江戸城にまで…
というところでこの第二巻ですが、これがまた、展開が早くて驚かされた第一巻に輪を掛けての急展開の連続。
開始早々、江戸城での羅刹との決戦が描かれたかと思えば、舞台は常夜衆が潜む尾張に移り、そこで始まる新たなる戦い。
その一方で常夜衆内部でも思わぬ動きが生じ、その動きは遠く○○まで動かし…
と、あれよあれよという間に、どんでん返しに次ぐどんでん返しの連続。冗談抜きで、一話毎に急展開があるという大変なことになっております。
これはこれで意外性と起伏に富んでいて、非常に楽しいのですが、しかしその一方で、新しい展開の印象が残る前に次の展開に移ってしまうため、結局、個々の展開の印象が薄くなってしまうのが大いに残念であります。
しかしそれであってもなお、ベテラン岡村賢二の手になるアクション描写は、実に魅力的なのであります。
この巻でも次々と登場する常夜衆の怪人(と呼ぶのが一番しっくりくる気がします…)たちの怪武術に対し、挑む十兵衛の剣術は、なりふり構わぬ超実戦派とはいえ、あくまでも正当派のそれ。
正派の剣術が、異端の武術をよく制しうるか!? というのは、ある意味チャンバラものの永遠の題材ではありますが、それが本作では、実に魅力的に描き出されています。
(特にラストの対決の決着の描写は、岡村作品ではちょっと珍しいものでインパクト大)
そしてこの構図は、実はそのまま、本作の根幹をなす怨念の姿へと繋がっていきます。
時の権力に弾圧され収奪され、まつろわぬモノ、異端の存在へと押し込められた者たち…それこそが常夜衆の姿であります。
( なるほど、だからこそ彼らは皆、妖怪変化の名をそれぞれいただいていたのか、と大いに感心したのですが、それはさておき)
であるとすれば、そんな彼らに抗するのに、将軍家指南役たる柳生の剣が振るわれるのは、ある意味必然なのでしょう。
しかしそれは――どれほど十兵衛の戦いに正当性があろうとも――これまでも続いてきた殺戮と怨念の歴史の繰り返しに過ぎません。 本作の結末で十兵衛が選んだ道は、その重みを背負いつつ、その連鎖を乗り越えるためのものと感じました。
そして彼の戦いは続きます。
現在連載中の「柳生無頼剣 闇狩の太刀」では、十兵衛と常夜衆の新たな戦いが描かれますが――さて。
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