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2011.04.21

「サンクチュアリ THE幕狼異新」第2巻

 4月からのNHK時代劇が「新選組血風録」であったり、相変わらず「薄桜鬼」関連商品は売れていたりと、相変わらずの新選組人気であります。
 しかしそんな中でも希有な例外、新選組で伝奇…はおろか能力バトルをやってみせた「サンクチュアリ THE幕狼異新」の第2巻です。

 新選組は一人一人が異能集団! 近藤勇は既に死んでいて、替え玉となっているのは深雪太夫! 新選組は京を守る八卦の集団の一つ「巽」の存在!

 と、言い方はよろしくありませんが、厨二魂を刺激しまくる設定の数々に、本作の第1巻を手にした時は大いに驚き、かつ喜んだものであります。

 そして第2巻では、新選組、八瀬童子に続く八卦衆として、柳生新陰流、土御門家の末裔、そして久留米水天宮(幕末史に詳しい方ならご存じでしょう、そう、あの人物であります)が登場。
 新選組は、己以外の八卦衆全てを敵に回し、死闘を繰り広げることとなります。

 非能力者相手にはほとんど無敵の新選組の面々。第1巻では、顔見せの意味もあってかその無敵ぶりが延々と描写され、そこが逆に話の緊迫感を削いでいた面はあったのですが、この第2巻では、同様の能力者である八卦衆が相手ということで、一転、苦戦を強いられることとなるのですが…

 しかし能力バトルとしては、非能力者相手より、能力者同士の戦いの方が面白いに決まっております。
 そしてそこに、幕末ものならではの思想対決の側面も加わり、単なるバトルものではない奥行きを加えているのが、本作ならではの魅力でありましょう。

 武士以外の身分として生まれながら、時流に逆らい、誰よりも武士たらんとした新選組。それに対し、時流に乗り、自らの守るべきものを捨てた他の八卦衆たち――
 その両者の戦いは、単なる能力者同士の戦いに留まらず、幕末という大変革の時代に日本各地で繰り広げられた戦いの縮図、象徴でもあるのでしょう。
(しかし個人的には沖田が武士になりたいと連呼するのは違和感が…)

 しかし…本当に本当に、心の底から残念でならないことに、本作はこの第2巻で完結。
 掲載誌が休刊となったというのが第一の理由かとは思いますが、それくらいは跳ね返せるポテンシャルのある作り手・作品だけに実に勿体ないお話です。

 とはいえ、作中で暗示されてきた決戦の地・天王山に八卦衆が集結し、新選組もまた一箇の戦闘集団として、あの浅黄色の隊服を脱ぎ捨てて戦場に飛び込むという書き下ろしのラストシーンは、これはこれで実に綺麗にはまっているのが、救いではありますが…

 王城の聖域を巡る戦いの末、新選組に集った者たちが何を見るのか――そして聖域を追われてなお、何を思って戦い続けるのか、それを見届けたかったというのが、正直な思いなのです。

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