「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次酒語り」第2巻 またもやの秘密…
「コミックゼノン」誌に移行して仕切り直しとなった「義風堂々 直江兼続」のいわば第2シリーズ「前田慶次酒語り」の第2巻であります。
第1巻から引き続き、「花の慶次」でも描かれた上杉家の佐渡平定のエピソードが、ここでも描かれることとなるのですが…
「花の慶次」の方ではそれなりに引っ張られた佐渡攻めですが、本作では、戦自体はわずか1話で終了。
これには前田利家ならずとも驚きたくなるところですが――もちろん、全く同じことをされても困るのですが――しかしむしろ戦後処理の方で数話使われているというのは、むしろ本作らしいと言えるかもしれません。
出来レースで戦いを長引かせ、上杉家の権威失墜、さらには秀吉による領地替えを狙っていた本間家。
その仕置きにおいて、兼続が見せたものは――上杉謙信生き写しのオーラ!
…という展開には、正直「またか」という印象で、ひっくり返りかけました。
本作において最大の秘密である、兼続が謙信の子という設定ですが、しかし、本作においては、その秘密を知る者が異常に多い。
この巻の後半に登場する大坂方のキャラクターのうち、前田利家以外――秀吉、三成、利休、乱裁道宗の全員が、その秘密を知っているというのに見られるように、あまりに便利に使われすぎているなあ…という気がしてなりません。
さらにその様子を見ていた上杉方の藤田信吉までも、その秘密に気付きかけて…という状態なのですが、ここはちょっとうまい切り返しがあったので、これはこれでOKでしょう。
そしてその切り返しの元祖(?)となった人物、兼続に協力した佐渡の歩き巫女の束ね・清音尼にまつわる秘密も面白く、何だかんだで、佐渡攻め編の〆自体は悪い印象ではありません。
しかし、まだまだ上杉家の危機は続きます。
上杉家を狙う秀吉の次なる手段は、上杉家に身を寄せる前田慶次を自分のもとに呼び寄せ、挑発して反抗させ、その責任を上杉家になすりつけようというもの。
この、慶次の秀吉謁見は、「花の慶次」でも序盤の山場という印象でしたが、そこに上杉家の浮沈を絡めるというアイディアは面白い。
そして、それに対し、自分と慶次の命を賭けて秀吉をブッ潰し、後は再び戦国の世になっても知らんぜ…という兼続の姿は、いかにも隆慶先生の描くいくさ人的なタチの悪さで、実にいい感じであります。
考えてみれば、権力者によるお家取り潰しの陰謀に対して、かぶき者が生死を超えた無茶苦茶な手段で立ち向かうというのは、隆慶先生の未完の名作「死ぬことと見つけたり」のシチュエーション。
兼続と慶次が、いかに「死ぬことと見つけたり」してくれるのか?
「花の慶次」のリメイク的な展開となってきた本作ですが、しかしここで意外なひねりを加えてきた…そんな印象であります。
「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次酒語り」第2巻(武村勇治&原哲夫&堀江信彦 徳間書店ゼノンコミックス) Amazon
関連記事
「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」 雲の兼続起つ!
「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第2巻 与六という爆弾!?
「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第3巻 義の子・与六が行く
「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第4巻 ついにあの男が登場!
「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第5巻 己の義を通す者たち
「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第6巻 兼続・慶次いよいよ見参!
「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第8巻 秀吉の欲したもの
「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次月語り」第9巻 そして新たなる時代へ
「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次酒語り」第1巻
| 固定リンク
コメント