「信長のシェフ」第1巻
戦国時代で目覚めた青年ケン。記憶を失っていた彼に残っていたのは、卓越した現代の料理のテクニックだった。その評判を聞きつけた信長に半ば強引に召し出され、仕えることになったケンは、その料理の腕前を武器に、戦国の世を生き抜くことに…
タイトルの時点で「これは!?」と気になっていた「信長のシェフ」第1巻であります。
料理漫画・グルメ漫画というのは、これはもう漫画の定番の一つ、漫画雑誌にはかなりの確率で掲載されているジャンルであります。
そして時代漫画で料理漫画というのも、数はさほどではないものの、確かに存在しているのですが…しかし、本作のような作品は珍しいでしょう。
何しろ主人公は(おそらく)現代の料理人。それが、戦国時代にタイムスリップし、織田信長をはじめとする当代の有名人たちと関わっていくことになるのですから…
間者と間違われ、仲間(つまり、少なくとも一人は、彼と同時代人がタイムスリップしてきたということになります)を失いながら一人生き延びた青年・ケン。
ほとんどの記憶を失っていたケンは、刀鍛冶の夏に拾われ、彼女の元に居候するうち、名前の他にほぼ唯一残っていた料理の知識と腕前で、周囲の評判となるのですが、その噂を聞きつけた信長に召し出され、命がけの料理対決の末に、信長の料理番に任命されます。
以後、ケンは宣教師フロイスの接待など、信長の難題を、自らの料理の腕と機転で切り抜けていく…というのが、本作の基本設定であります。
主人公が、料理の腕で危機を乗り越えたり、人の心を開くというのは、これはこのジャンルの定番中の定番であり、その点は本作もそこから外れるものではありません。
また、過去の時代にタイムスリップした現代人が、その知識を活かして活躍というのも、それこそ大ヒットしたばかりの「JIN 仁」のように定番パターンでしょう。
(さらに言えば、戦国時代にタイムスリップした現代人が身を寄せるのは、かなりの確率で信長なのですが、それはさておき
しかし、定番の素材、定番の味付けであっても、その組み合わせによって新たな料理が生まれるように、本作は、料理もの+戦国もの+タイムスリップものという組み合わせによって、独自の存在感を出していると言えるでしょう。
その良い例が、信長の御前での宣教師フロイスの接待ですが…展開的には料理ものの定番でありつつも、そこにこの時代の、この場面ならではの意味を与えているあたり、なかなかに面白いのです。
物語はまだ始まったばかりということで、描かれる歴史上の事件もまだ少なく、また、ケンが料理の腕を振るう場面もさほど多くはないのですが、これからの題材には事欠かないはず。
文字通り、料理の仕方によっては相当にユニークな作品になるのでは…と期待しているところです。
ただ一つ気になるのは、ケンが記憶喪失という設定のため、能力の限界がまだ見えない(万能に見えてしまう)ことと、ライバル不在なことですが…
この辺りも含めて、楽しみに待つことにしましょう。
「信長のシェフ」第1巻(梶川卓郎&西村ミツル 芳文社コミックス) Amazon
| 固定リンク
コメント