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2011.09.18

「常住戦陣!! ムシブギョー」第1巻・第2巻 引き下がれない理由

 以前「週刊少年サンデー超」誌で連載されていた熱血時代アクション「ムシブギョー」。
 その「ムシブギョー」が、増刊での連載を終了し、「常住戦陣!! ムシブギョー」とタイトルを改め、「週刊少年サンデー」本誌に登場しました。

 週刊に移行と聞いたときには、てっきり、第二シリーズ的に、そのまま増刊版のストーリーを引き継いでのスタートと思いきや、さにあらず。

 時は亨保、何処からか現れては人を襲い、食らう巨大昆虫に対抗するため、幕府により設置された江戸新中町奉行所、通称「蟲奉行所」。
 その蟲奉行所の同心となった少年剣士・月島仁兵衛が、先輩同心たち――蟲退治集団・蟲狩の最強剣士・無涯、火薬の扱いを得意とする忍者の末裔の少女・火鉢、かつて500人以上を斬ったという人斬り・恋川春菊、気弱だが陰陽道の式神を操る少年・一乃谷天間らとともに、蟲たちに立ち向かう…

 という基本的な設定、人物配置はそのままに、物語を一端リセットして、一からリスタートした作品となっております。
 ストーリーの方も、増刊版の冒頭部分をほぼそのまま――仁兵衛の江戸出府と蜘蛛相手の初陣、無涯とコンビでの蚤退治、火鉢とコンビでの天道虫退治――なぞっていますが、週刊連載ということもあってか、ある程度余裕を持った話運びとなっているのが目を引きます。


 しかし、なによりこの週刊版が、増刊版から大きく異なった印象を受けるのは、第1話に仁兵衛の子供時代の――彼がひたすらに強さを求め、決して引かないことを誓った理由となる――エピソードが追加されている点にほかなりません。

 こうと決めたらひたすらに突っ走り、決して後へは引かない…それは増刊版から変わらぬ、仁兵衛のキャラクターであります。
 しかしそれは(ギャグとして描かれている分は差し引いたとしても)見ようによっては単なる猪武者であり、作中の登場人物たちから――最初は否定的な評価がなされるものの――やたらと賞賛されるような美点とは、私には感じられませんでした。

 私がそう感じてしまったのは、ひとえに、仁兵衛が背負うものがなさ過ぎる、という点に尽きたのですが、その部分について、この週刊版ではきっちりと描いてくれたのは、大いに好印象であります。
 なるほど、このような過去を背負っているのであれば、仁兵衛が、自らが武士として強くあるために、そして人を守るために、決して引き下がらない、執念にも似た想いを抱くことに納得が出来るというものです。

 第2巻までの段階では、上で触れたように、ほぼリスタート分のためにまだまだ独立した作品としての判断は難しい部分はあります(尤も、第2巻のラストに登場した徳川家重は、週刊版で初めて登場したキャラクターで、その非常にユニークな言動に今後の期待が出来ますが)。
 しかし、週刊版で個人的に最もひっかかっていた部分がクリアされたのは非常に大きい。周囲の期待がいささか大きすぎるような気もしますが、この先の展開を楽しみにしても良さそうです。

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