「いかさま博覧亭」第1巻 博覧亭、いよいよ新装開店!
私が強く押している時代漫画の一つである「いかさま博覧亭」の、待ちに待った単行本第1巻が刊行されました。
「怪異いかさま博覧亭」として「Comic REX」誌に連載された作品の続編――というか、掲載誌を「電撃コミックジャパン」に改めての続きであります。
本当に掲載誌を変えてタイトルをちょっと変えた(いきなり第一話の冒頭からそれをネタにするというのも実にヒドイ(褒め言葉)だけで、舞台設定も登場人物も、話のノリも、「怪異いかさま博覧亭」から全く変わらず。
世界最大の歓楽街であったお江戸両国の流行らない見世物小屋「博覧亭」を舞台に、博覧亭の若旦那、若白髪の妖怪馬鹿・榊を中心とする、ちょっとおかしな人間――あと妖怪や付喪神たち――の引き起こす大騒ぎを描いた良質の時代コメディであります。
この第1巻に収められているのは、博覧亭に眠っていた生き人形と幽霊騒動や、変わり牡丹灯籠と猫又さらいの珍騒動、黄泉に通じる壺とくノ一・八手の過去など、今回もやはり楽しいエピソードばかり。
今まですっかり忘れていた(本当に!)八手が、故郷を何者かに滅ぼされて、一人江戸に逃れてきたくノ一であるという設定を踏まえた、この巻一の長編エピソードも興味深いのですが、個人的にやられた! と思ったのは、第二話の変わり牡丹灯籠と猫又さらいであります。
今は亡き博覧亭の親方のおかげで、江戸有数の猫又スポットとなった寺から、次々と猫又が何者かに攫われているという事件と、蓮花の知り合いの絵師・よっちゃんが、どうやら幽霊らしい存在に取り憑かれて、夜毎睦言を囁いている(しかもその幽霊が増えていく!?)という牡丹灯籠めいた事件…
この二つが意外な(?)ところで結びつくのも楽しいですし、その動機も個人的には大いに頷けるのですが、それはさておき、実はよっちゃんは――という、本作にしては珍しいオチがついたのには、嬉しい不意打ちを食らわされた気分であります。
さらに、このエピソードでは、両国に怪異の存在が許される土壌、一種のアジールを作ろうとしている榊の姿が、久々に描き出されていて、単なるお笑い活劇ではない本作ならではの味を見せてもらえたのも、また嬉しいのです。
コミックスの広告でも扱いが一番大きかったり、ようやくその面白さが正当に評価されてきた感のある本作。
これからも、この面白さ、暖かさにいつまでも触れていられることを楽しみにしているところです。
「いかさま博覧亭」第1巻(小竹田貴弘 アスキー・メディアワークス 電撃ジャパンコミックス) Amazon
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