「曇天に笑う」第2巻 見えてきた三兄弟の物語
唐々煙の明治伝奇アクション「曇天に笑う」の第2巻であります。
巨大な監獄・獄門処が湖上にそびえる琵琶湖周辺を舞台に、獄門処への橋渡し役兼逃亡者捕縛を生業とする曇神社の三兄弟――天火、空丸、宙太郎の物語も、いよいよ本題に入ってきたという印象です。
…というよりも、第1巻の時点で本編が第1話のみ、あとはビフォアストーリーという破格な構成だったこともあって、ようやく第2巻に入って、本作がどういう物語なのかわかった、というのが正直な印象。
そもそもこの物語がどこに向かっているのか、そしてその中で三兄弟がどのような役割を果たすのか?
それがこの巻でようやくわかったように思います。
逃亡した元長州の人斬りを追い、ただ一人対峙する空丸。天火に頼るまいと必死に戦うも、腕前の差は歴然で、その命は風前の灯火となってしまいます。
そこに助っ人に入ったのは、神社の居候の青年・白子。凄まじい戦闘力を持つ彼の正体は、何と…
そしてようやく神社に駆けつけた天火の前に現れるは軍服に身を包んだ、しかし明らかにただ者ではない集団。
彼らこそは時の右大臣・岩倉具視直属部隊“犲”、そしてかつて天火が所属していた部隊でありました。
第1巻に収録された600年前の物語「泡沫に笑う」と、ここで示された情報を合わせることにより、物語の向かう先が見えてきます。
300年に一度復活し、この世に災いを振りまく怪物・オロチ。
復活の際には、自らを宿らせる器を必要とするオロチですが、しかし厄介なのは、その器が、オロチに敵対する者たちの中に、顕現することであります。
つまり、本来であればオロチと戦う同志の中に、その敵に力を与える者が入り交じっているということですが――さて、この明治の世でその候補者に含まれているのは、“犲”のメンバーと、そして曇神社の三兄弟。
なるほど、誰が敵で誰が味方かわからないところに、バトルが発生する余地があるのか――と思いきや、それはものの見事にひっくり返されるのですが、それはさておき。
物語の大枠は見えてきたものの、もちろんまだ先はわからないことだらけ。
「獄門処に入る科人はある物を持って来るべし」という謎の掟が支配するという獄門処と、そこに潜む者に、どのような秘密があるのか。
600年前の因縁を抱いて生きる者に救いはあるのか。
そして、オロチの器と、自分たちの宿命と、三兄弟はどのように対峙することとなるのか。
画力筆力は言うことなし、キャラも物語も魅力的とくれば、あとはひたすら、作者が見せてくれる世界を楽しむほかありますまい。
気が早いですが、次の巻にも期待しているところであります。
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