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2011.10.21

「ドリフターズ」第2巻 異世界の国盗り、始まる

 何処とも知れぬ異世界で死闘を繰り広げる死んだはずの偉人たち――平野耕太の意欲作「ドリフターズ」の、待ちに待った第2巻が発売されました。
 巨大な敵に立ち向かうための覇道を歩み出した「漂流者」(ドリフターズ)の行く末は――

 関ヶ原の戦での死闘から一転、異世界に迷い込んだ島津豊久。そこで同様に迷い込んできた織田信長、那須与一と出会った豊久は、成り行きから、人間に搾取されるエルフの村を救うことになります。

 あたかも西洋ファンタジーのようなこの世界においては、彼のように異世界から迷い込んだ者たちが、他にも幾人も存在するのですが――しかし、彼らはその性格を大きく異にする二つのグループに分かれます。

 一つは、豊久同様、生身の人間としてこの世界にやってきた「漂流者」。
 もう一つは、生前とはうって変わった魔人の如き異能を持ち、生者への怨念をたぎらせた「廃棄物」。

 今、この世界の人間たちを滅するため大規模な侵攻を始めた黒王なる存在に率いられた廃棄物たちに立ち向かえるのは、漂流者のみ。かくて、豊久たちの戦いが始まる…

 と言いたいところですが、オークの大軍勢やドラゴンを率いた廃棄物に挑むには、豊久たちが如何に強者であろうとも無謀の極み。
 戦うためにまず必要なのは、戦力、軍隊! というわけで、豊久は――というより信長は――エルフを率いて、国盗りの戦いに乗り出すことになるのであります。

 第1巻が、漂流者と廃棄物、両者の顔見せ的な色彩が強く、いまだ豊久らとは会ってもいないものの、様々な漂流者たちの存在が描かれたのに対し、この第2巻では、ほとんど豊久・信長・与一のトリオの活躍のみが描かれることとなります。

 信長曰く戦闘民族の血を発揮し、一軍の将として戦場を駆ける豊久、その軍師格として実に楽しげに戦いを支配する信長、かつての主が得意としたようなゲリラ戦術を見せる与一…
 場所と相手は本来のそれとは異なっても、その持てる能力をフルに発揮して行われる彼らの戦いは、彼らの伝説からイメージされるほどは決して綺麗ではない、いやむしろ汚いとすら言えるものではありますが、それだからこそ、こちらに響くものもあります。

 そしてまた、単なる格好良さにとどまらないドラマがあるのもまた、本作の、いやヒラコー作品の魅力。
 知らず知らずのうちに、豊久に自分の息子・信忠の姿を見る信長と、それを明確に拒絶しながらも、逆に信長に父性を感じてしまう豊久のくだりなど、実にいい。
 マイペースに見える与一も、かつての主・義経に愛憎複雑な想いを抱いているようにも感じられ――そして当の義経が、今は黒王側に居るという皮肉――彼らの戦いが殺伐としたものであるほど、その彼らの人間くささが、グッと来るのであります。


 尤も――これは多分に言いがかり的ではありますが――「ヘルシング」でもそうであったように、この辺りの人物配置やドラマ描写が綺麗にまとまりすぎている、作者の意図がはっきり見えてしまう辺りには、好悪が分かれるかも知れませんが…


 閑話休題、いよいよこの世界で最大の帝国(その創始者が、あのチョビ髭のおじさんらしい、というのがまた面白い)相手に、国の切り取りを仕掛けた漂流者三人。
 この巻のラストでは、彼らの真の敵である廃棄物の一番手、ジャンヌ・ダルクとジル・ド・レイが出現、豊久と与一相手に異能バトルを展開と、いよいよ盛り上がるばかりであります。

 果たしてこの物語がどこに向かっているのか、それはまだまだ全くわかりませんが、この盛り上がりに身を任せて、漂流者たちの大暴れにひたすら胸躍らせるのが、正しいと申せましょう。


 それにしても…無花果云々という言葉を発した黒王の正体は、やはりあの方なのでしょうね。

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コメント

黒王様・・・イチジク持っているし、あのお方では。まあ日本人の漂流物とか、西暦以前の生まれのハンニバル達はあのお方相手でも気にしないでしょう(笑)。

今回出てきたオカマの貴族様サン・ジェルミ・・・・彼はひょっとしたら、あの不老不死の伯爵?

山口多門中将も出現し(菅野直との再会が楽しみ)、今度は誰が出るかと思っていたら、本誌連載では十月期間の「大師匠」がこのブログでもお馴染みの・・・まあカンの良い方は魔法のアレで気付いたようですが。先が楽しみです。

投稿: ジャラル | 2011.10.21 12:24

黒王に関してはあからさますぎて何らかのミスリードじゃないかと言う気がしますね。
実は良く似たエピソードを持つ古代日本のあの人だったりして。

あと今作はやたらとう●こをフューチャーしてますね。ここまでう●こがシリアスに大活躍する作品と言うもの珍しいです。

投稿: 木村 | 2011.10.23 19:13

ジャラル様:
確かに…菅野直とか、誰じゃそりゃとか言いそうですねえ。
明示されたわけではなかったので触れませんでしたが、確かにサン・ジェルミさんも怪しいところです。
そしてそのヒントだけで大師匠わかっちゃいましたよ! もう何でもありですな

木村様:
うーむ、言われてみればあからさますぎるといえば過ぎますが…敵の大将としては不足なしですよね。
と、言われてみればたしかにうここは大活躍ですね! ある意味リアルと言えばリアルですが、ここまで泥…いやうここ臭い戦闘シーンも珍しいですね

投稿: 三田主水 | 2011.10.23 23:07

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