作り物の街にて「UN-GO」第1話特別先行試写会を見る
今日は、この10月からノイタミナ枠で放映される「UN-GO」第1話特別先行試写会に参加するという幸運に恵まれました。
おいおい、何で近未来探偵アニメの話をこのブログで、とおっしゃる向きもあるかもしれませんが、本作の原案は坂口安吾の「明治開化安吾捕物帖」。時代ミステリなのであります(その辺りはこちらをご覧ください)
さて、ミステリものなので、内容についてはネタバレ抜きで、という重い枷をつけられての感想ですが――
この第1話は、「安吾捕物帖」第1話「舞踏会殺人事件」をベースにした内容…
なのですが、何しろ内容はミステリ。わずか30分以内で、キャラクター・舞台設定の紹介と、きちんと起承転結を(そして原案の内容を)踏まえたお話の展開ができるのかしら、前後編でもないと苦しいのでは? などと思いましたが、いささか駆け足ながら、きっちりと手堅く、そのいずれも見せてくれました。
しかし、単純に原案を近未来に移しただけ、というのではなく、事件の概要・骨格はそのまま使いつつ、しかしそこに全く別の意味を与えて新たな物語を作ってみせるという離れ業。
この辺り、スタッフの顔ぶれを見ればいかにも、という作りなのですが、こういうやり方は大好物であります。
原案読者に対して言えば、そちらでお馴染みの、主人公・結城新十郎と、勝海舟(本作では海舟に当たるキャラ、ですが)の、二人の名探偵の関係が、本作では、さらに一ひねりくわわったものとなっているのが楽しい。
こうした構造は、ミステリものではまま見かけるように思いますが、しかしそれを本作でやったところに、ニヤリとさせられるのです。
もう一つ、いかにも今のマンガっぽいというか、ミステリでそれ反則、的能力の持ち主が登場するのが、原案との大きな相違点なのですが――
しかしこの使いどころがなかなかうまい、というよりも、それを通じて描かれるものこそが、本作のキモというべき内容で、この使い方であれば納得であります。
さて、そんな展開の末に、物語終盤でババババっと飛び出す台詞の内容と描き方には、これはたぶん賛否分かれるでしょう。
しかしながら、この生臭さ・青臭さも、ここは一種の味、むしろ作り手的には狙いどころと思った方が良さそうです。
(個人的には「あれ、この台詞をわざわざ言わせるかな?」的な部分もあったのですが、これも意図して言わせたものでありましょう)
…それにしても、本作の最大の特徴であろう、近未来の戦争後の日本(チラッと語られる、その「戦争」の内容にも納得)の姿が、今の、いやこれからの日本にオーバーラップしてしまったのは(企画時期的に)偶然の部分が大きいのでしょうが、やはり驚かされます。
偶然と言えば、この試写会がフジテレビがあるのは台場――
戦争に備えて生み出された地に築かれた、極めて生活感に乏しい作り物の街で、本作が上映されるというのは(しかも天気は作品のイメージに似合う曇り)、なにやら出来過ぎにすら感じられます。
閑話休題、OPもEDも申し分なし、ちょっぴり心配だった勝地涼の新十郎も違和感なく、第2話以降も楽しみにして良さそうであります。
もう一つ、11月に劇場公開される第0話の予告編が最後に流れたのですが、そこのミステリファン、安吾ファンにはびっくりの情報が――こう来たか! と大いにテンションが上がった次第です。
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