「妖術武芸帳」 第03話「怪異おぼろ雪崩」
尾張藩江戸屋敷を窺う幕府の隠し目付たちを妖術で捕らえた夢幻道士。道士に操られる隠し目付たちの手により、覚禅も捕らえられてしまう。覚禅を追って藩邸に潜入した誠之介もまた、道士の妖術に陥り、夢幻奈落なる空間に陥り、隠し目付たちに襲われる。仕掛けておいた火薬を爆発させ妖術から脱出した誠之介は、傷の痛みで正気を保ち、道士を倒す。誠之介と覚禅は、香たき殿の助けで藩邸を脱出するのだった。
第1話から敵か味方か謎の存在だった怪僧・覚禅。その正体が今回ほぼ明らかになります。
彼の正体は、どうやら大目付配下の隠し目付。彼の他にも、数多くの隠し目付が、前回毘沙道人が接近した尾張藩江戸屋敷を監視しています。
しかし、尾張藩邸から現れた謎の駕籠を、ぞろぞろと追っていく姿はいかがなものかと思うのですが…案の定、駕籠は罠、中から現れたのは、道人配下の四賢八僧の一人・夢幻道士でありました。
手にした花を隠し目付たちに見せつける道士。その花が開いていく様に目を引きつけられる目付ですが、花から黄金の花粉が吹き出し、それに引き寄せられるように巨大な花の中に目付は吸い込まれていきます。
そして花は閉じ、その場に残ったのは道士のみ…
そうとは知らぬ覚禅は、完全に敵の術中に陥った仲間たちに襲われ、捕らわれてしまうのでした。
さて、江戸城中では香たき殿が時の将軍・徳川家治(演じるは坂口祐三郎!)に香をふるまいます。八代将軍から三代に渡って使えてきたという香たき殿は、将軍の相談役となっているようですが、ここで初めて香たき殿は、家治に道人の存在を語ります。
さて、舞台は誠之介の屋敷に移ります。行方不明となった兄を探してやってきた楓の前に現れたのは、同じく行方不明となった目付二人。彼らについていきそうになった楓を止めたのは、もちろん誠之介であります。
と、楓を人質に誠之介を捕らえようとする目付に対し、誠之介は刀を差し出すのですが…床に仕掛けておいた紐を引っ張ると天井から稲光(?)のようなものが放たれ、それを浴びた目付は、術が解けたか、死体に変わってしまうのでした。
こうして変事を知った誠之介は、覚禅の行方を追って、夜に尾張藩邸に潜入。しかしその前に、夢幻道士が現れます。
焦らず騒がず、持参の蝋燭を燭台に立ててから道士と対峙するほど落ち着いた誠之介ですが、花を斬ってみろという道士の挑発に乗ってしまいます。しかし、斬っても斬っても花は元のまま――そして、開いていく花に、彼もまた引き寄せられ、その向こうの世界、夢幻奈落に落とされてしまうのでした。
魔空空間か幻夢界のはしりのような異空間で彼に襲いかかるのは、行方不明となった目付たち。思うように太刀を振るえず、体中に傷を負わされ窮地に陥った誠之介ですが――しかし彼には奥の手が。
先に燭台に立てておいた蝋燭に繋がった紐。それを引っ張ると蝋燭に仕掛けられた火薬が大爆発! 術が破れ、彼は現実に戻るのでした。
本作における妖術の数々は、基本的に幻術と呼ぶべきもの。たとえ奇怪な世界に陥ろうとも、現実的な物理現象によって、術を破ることができる…今回も、そんな誠之介の策が、妖術を打ち破りました。
庭にぶら下げられていた覚禅を発見した誠之介。その背後に道士が忍び寄りますが…しかしもちろん、それに気付かない誠之介ではありません。
再度術をかけようとする道士ですが、しかし目付に斬られた傷が誠之介を現実に留め、一刀の下に道士を斬るのでした。
さて、尾張藩邸から脱出した誠之介ですが、しかしまだ意識が戻らない覚禅を抱えて藩士に追われてしまいます。
が、追ってきた藩士が見たのは、夜道を行く三丁の駕籠…呼び止めると、その一つから顔を出したのは何と香たき殿。他の駕籠には上様愛用の香道具が入っていると言い放った香たき殿は、さらに葵の御紋を見せつけて藩士を土下座させ、悠々と去っていくのでした。
もちろん、残る駕籠の中身は誠之介と覚禅だったのですが――この辺り、香たき殿を演じる月形龍之介が水戸黄門役者としても知られることを思えば、ニヤリとできる場面でありました。
今回の妖術師
夢幻道士
手に持った青い花を用いて、相手を異世界に引きずり込む夢幻奈落の術を操る僧形の男。
尾張藩江戸屋敷を窺う隠し目付たちを夢幻奈落に引きずり込み、手足の如く操った。覚禅を捕らえ、誠之介も狙うが、火薬の爆発で術を破られ、一刀の下に斬られた。
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