「妖術武芸帳」 第05話「怪異昇天仙女」
小田原城に現れ、城主を脅かす毘沙道人。一方、誠之介は、大道芸人に扮した羽化仙女と闇童子の姉弟に襲撃され、羽化登仙の術にの前に意識を失ってしまう。一方、怪しい葬列の行列に襲われた覚禅はこれを返り討ちにして、棺桶の中に捕らわれていた誠之介を救い出す。寺の墓場に赴いた誠之介は、再び姉弟と対決、竹林に誘い込むことで相手の術を封じて勝利する。しかし誠之介は女子供を斬るのは嫌いだと二人を見逃すのだった。
前回から毘沙道人を追って尾張への旅に出た誠之介と覚禅。一方、追われる毘沙道人は、小田原城に出現していました。
腰元の小萩を操って城主の大久保弾正の寝所に入り込んだ道人。城主は怪しい奴! と斬りつけ、見事首を落とすのですが…見る間に新しい首が生え、それをまた城主が斬り落とし…と、床に転がった四つの首が宙に舞い、さすがに城主も悲鳴を上げて許しを請います。
首を斬られた妖術師が首を繋ぐというのは定番(?)ですが、ここでは斬られた首がそこに残って新しく生えてくるというのが面白い。特撮自体は今の目で見るとさほどではありませんが、シチュエーションの面白さに感心します。
さて、毘沙道人は城主に二つの願い事をします。一つは尾張大納言に加担すること。もう一つは、かつて、北条家に仕えた風魔屋敷の所在地を教えること。弾正は幕府の命に背いて屋敷を何処かに隠したと言うのですが…
道人は、駄目押しとばかりに小萩を一瞬の間に老婆から骸骨に変えてみせるのでした。
と、場面は変わって誠之介。何を思ったか、唐人姿の大道芸人の姉弟の芸を見物するのですが…
その姉弟のとっておきの芸というのは、盲目の姉が地に種を蒔き、水をかけると、あっという間に芽が出て夕顔の蔓が天に伸びていくというもの。その蔓に弟が登っていき、雲の中にその姿が隠れたと思いきや…
雲の中から降ってくる手裏剣。小柄で誠之介が反撃すると、空からバラバラになった弟の身体が!
この怪事に誠之介を取り囲む見物人たちですが、しかし誠之介は冷静に、彼らが誠之介が幻術にかかった隙に襲いかかる手はずだったことを見破っていました。
そして襲いかかる戦闘員を切り捨てる誠之介ですが、その隙に姉が種を蒔き、伸びた夕顔の蔓に巻き付かれた誠之介は天に登った末、夕顔の花から吹き出した花粉によって意識を失ってしまうのでした。
これこそは羽化登仙の術、遣い手の姉は羽化仙女、体を繋げて復活した弟は闇童子の妖術師姉弟であります。
誠之介がそんな目にあっているとは知らず、城下を行く覚禅は、娘の亡骸を引き取りたいと門番に懇願する小萩の母と出会います。遺体すら引き渡されないという話に不審を抱いた覚禅は、遺体が葬られたという寺に向かいますが、途中で出会った葬列に従っていたのはあの姉弟。
怪しいと見て襲いかかった覚禅の予感は正しく、一行はやはり道人の手下。棺桶(当時の棺はもっと桶っぽかったのでは…とか言わない)の中に小萩の遺骨と誠之介が入れられていたのを見た覚禅は、「運が良ければ助かりもしようぜ!」と棺桶ごと崖から投げ落としてしまうのですが…覚禅のこのキャラクター、豪快でいいなあ。
そして運が良かった誠之介は窮地を逃れ、覚禅と合流。小萩の母とも会い、一連の事件の背後に道人がいることを察知します。
覚禅は、腹の虫が治まらぬと小萩の仇を討つために別行動し、誠之介は自分が運ばれるはずだった寺へ。そこで真新しい自分の墓を見つけた誠之介は、そこで戦闘員たちの襲撃を受けます。
さらに襲いかかる羽化仙女の姉弟。しかし誠之介は戦おうともせず、逃げ出してしまいます。しかし逃げるのも限界、竹林に追いつめられた誠之介…仙女は、誠之介に術をかけて手先にしてくれると嘯きます。
そして再び羽化登仙の術を仕掛ける仙女ですが――以前ほど夕顔の蔓には力はなく、その蔓は誠之介が斬って投じた竹に巻き付いてしまいます。
そう、誠之介は、根が張り巡らされた竹林で戦うことによって、夕顔の蔓の力を弱めたのであります。
地に蒔いた種が見る見るうちに伸びて…というのは、実際に様々な伝承に顔を出すある意味定番の妖術エピソードですが、それを生かしつつ、科学的に(?)反撃するのは、本作ならではの醍醐味と申せましょう。
さらに距離を取って切り倒した竹を投げつけるというクレバーな戦法で攻める誠之介に、さしもの姉弟も追いつめられるのでした。
しかし「生憎だか私の剣は女子供を斬るのは嫌いと言っている」と、格好良いことを言って誠之介はその場を立ち去るのでした。
これに対して「このままではすまされないぞ!」と負け惜しみを言う闇童子の声に聞き覚えがあると思えば、演じているのは声優の堀川亮(現・堀川りょう)…人に歴史あり、であります。
今回の妖術師
羽化仙女
楽器の音に乗せて妖術を操る盲目の少女。その音を聴いた者に、地に蒔いた夕顔の種が見る見るうちに成長して天まで伸びる幻覚を見せる羽化登仙の術を操る。
一度は術で誠之介を捕らえるが、再度の対決時に竹林におびき寄せられ、竹の根に夕顔の成長を阻まれて敗れた。
闇童子
羽化仙女の弟。普段は姉と共に大道芸人に身をやつしている。体をバラバラにしてみせて、再び繋いで見せる術を使う。
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