「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次酒語り」第3巻 義風は吹けども…
直江兼続と前田慶次の友情譚、「義風堂々 直江兼続 前田慶次酒語り」の第3巻は、慶次・兼続と豊臣秀吉の対決。もちろん、武力による対決ではありませんが、しかしそれだけに厄介なこの対決の行方は…
というわけで、この巻ほぼ全てを使って描かれるのは、「花の慶次」(あえて「一夢庵風流記」とは言わない)の序盤の山場、慶次の秀吉との謁見であります。
「花の慶次」の方では、慶次と秀吉の一対一の対決として描かれたこの場面ですが、しかし本作においては、兼続にも重要な意味を持つもの。
この謁見、真の狙いは、上杉家に身を寄せる慶次の不始末はすなわち上杉の不始末として、上杉家を潰すことなのですから…
ここで慶次一人のために上杉家の運命を賭ける、いや秀吉と差し違える覚悟を固めるところが、「いくさ人」の恐ろしいところ。
そして何より、友のために命を捨てることこそが兼続にとっての「義」…
かくて、秀吉と慶次の対決の場に兼続も加わることになるのですが、しかし役者はそれだけではありません。
二人の覚悟を見抜いた石田三成(秀吉を護るため、島左近経由で柳生の遣い手を用意するという展開にニヤリ)、そしてかつて因縁のあった兼続という男を見定めるために徳川家康も加わり、一世一代の対決が幕を開けることとなります。
(ちなみに、さらっと秀吉の大秘密が明かされてしまうのがちょっと面白い)
…が、やはり兼続を主役とした物語で、このエピソードを描くのは、ちょっと無理があったという印象が否めません。
もちろん、上に述べた通り、色々と本作ならではの捻りは加わっているのですが、やはりこのエピソードの主役はあくまでも慶次。
兼続と慶次が合流した、この「前田慶次酒語り」では、これまでも兼続が慶次に喰われる、あるいはキャラがかぶって感じられることがあったのですが、今回は慶次に完全に兼続が主役の座を奪われた感があります。
この場に居合わせた家康が、慶次と共に死のうとする兼続の姿に「義風」を見るという展開自体は美しく、兼続の存在感をアピールはしているのですが、しかしむしろ、この場で兼続の方に注目する家康に違和感を感じてしまいます。
これは「花の慶次」既読者の感想かもしれませんが、「花の慶次」の展開に兼続を加えてアレンジしても、やはりリメイク以上の印象は受けません。
兼続が慶次に打ち勝つには、やはり本作ならではの物語が読みたい…その想いが強くなりました。
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