「UN-GO」 第09話「海勝麟六の犯罪」
ハッカー集団が海勝のJJシステムズに標的を定め、攻撃を開始した。そんな中、海勝がTVの討論番組に参加することとなり、自分に批判的な者たちを集めて殺そうとしているという噂が流れる。果たしてTV局で大爆発が起き、多数の死傷者が出た上、海勝も重傷を負う。新十郎に海勝の無実を証明する依頼をする梨江。しかし、新十郎は捜査を進める中、海勝が別天王を手に入れたのではという疑いを深める…
…困った。
いきなりで恐縮ですが、これが今回の正直な感想であります。
「UN-GO」もいよいよ残すところあと3話、おそらくは前中後編の前編に当たる今回なのですが…謎また謎、という言葉がこれほど当てはまる内容も珍しい。
アノニマスチックなハッカー集団に海勝会長のJJシステムズが攻撃を受ける中に起きたTV局の爆破事件。その際に放映されていたのは、生中継の討論番組――海勝会長と、彼に批判的な政治家・企業家たちが一堂に集い、激論を戦わせる場であります。
放送開始前から、この場が海勝による敵対者抹殺の罠という噂が流れていた上、、出演者で生き残ったのは海勝とあと一人のみ…
さらに、謎の爆破手段はJJシステムズで開発されていたマイクロウェーブ送信技術ではないかという噂まで流れ、海勝の立場が限りなく悪くなる中、新十郎は、ある意味宿敵である海勝のため、真実を明かす依頼を受けることとなります。
…今回の予告で因果が珍しくシリアスに読み上げていた「わざわざこの犯人を探すぐらいなら、武田信玄が自然死であるか、他殺であるか、自殺であるか、その犯人でもさがした方がマシなぐらいですよ」という台詞。
これは、今回の原案の一つ「冷笑鬼」で、原案の新十郎が気の染まぬ事件に対して語った言葉ですが、「UN-GO」の新十郎も心境は同じ、ということでしょう。
それでも梨江の懇願にも似た依頼に応えて捜査を開始する新十郎ですが、しかし、その梨江が「事件当時、海勝が自宅に居た」と発言したことから、新十郎の疑いは、海勝自身に向かいます。
人間には現実としか思えぬ虚構を作りだし、そしてそこに無い物・者を見せ、在る物・者を消し去る存在――別天王を、海勝が手に入れていたのではないか? と…
しかしそれも一面的な推理ではあります。別天王の力を、そして何よりも、そんな我々の――これまでのエピソードを通じて培われた――真実を虚構に、虚構を真実に平然と変えてしまうという海勝観を利用して、誰かが罠をかけているのかもしれない。
疑おうと思えば、海勝だけでなく、速水も、不破も、因果すら疑うことができるのです。
そんな中、別天王の力に対し、新十郎はある手段で対抗せんと試みます。その有効性はさておき、その手段は、しかし、真実を歪め、虚構を作り出すものに見えます。
好むと好まざるとに関わらず、真実を解き明かすことを自らの役割と以て任じてきた新十郎にとって、それは彼自身であることを放棄するものではないか?
さらに言えば、果たして新十郎にとって真実を解き明かすということは、海勝や別天王に隠され、歪められたモノを暴くことと本当にイコールなのか…?
そんな危うさを感じさせつつ、物語は次回に続きます。
と、スペースがなくなってしまいましたので、原案との登場人物との対比は次回に送りますが、原案のうち「赤罠」は、“不破”が自らの生前葬を演出するも本当に炎に巻かれて…という内容。
一方の「冷笑鬼」は、“水野”が己を憎む者を一同に集めて殺し合いをさせんとするも…という内容ですが、さて、それがどこまで参考になるか。
こちらの方も、これまでのエピソードを通じて培われた原案観(?)があるだけに、困惑させられるばかりなのであります。
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