この14日からシネ・リーブル池袋にてレイトショーでイベント上映されている「獣兵衛忍風帖」の初日に行ってきました。リマスタリングされた獣兵衛を大画面で観たい、というのはもちろんありましたが、川尻善昭監督のトークショーが行われるというのが、最大の理由であります。
ちなみにこのトークショーの直前、ネットで気になる情報を見ました。「獣兵衛プロジェクト」なるものが進行中であり、先日のサクラコン(シアトルでのアニメコンベンション)で予告が上映されたと。
確かに来年は獣兵衛20周年(!)。今回のリマスタリングはブルーレイ化のためですが、それだけでわざわざレイトショーとはいいえ上映するかな? と思ってはいたのですが、さて…
というわけで上映前に大沼弘幸氏司会で開催されたトークショーでの川尻監督のトーク内容について、以下に簡単に挙げます(簡単なメモと記憶頼りなので、細部についてはご容赦を)。
○リマスタリングについて
・今回のリマスタリングは監督も自らチェックした。
・フィルムのゴミを取り除くほか、中間色の再現に気を使った。フィルムではほとんど潰れていた中間色も、デジタル化されれば表示することができる。
・しかし物語や動きは昔のまま。相変わらずのキャラの顎は長い(笑)
○特報について
・今回の上映は、エンドクレジットの後に特報が付く。
・また獣兵衛をやりたい、そのとっかかりになるものを、ということで、3分の作品を3本作った。久々に獣兵衛が描けて楽しかった。
・フィルムは箕輪豊(「獣兵衛忍風帖」のキャラクターデザイン・作画監督)と二人でやった。原画は全部自分で描いた(!)
○「獣兵衛忍風帖」という作品について
・自分が楽しいと思うものをどう伝えるか、ということを考えて作った。
・濁庵役の青野さんに替わる役者はいない。亡くなったのは本当に残念。
・時代劇ではあるが、ハリウッド映画で育ったこともあり、新しい時代劇を作ったつもり。言ってみれば、しけた探偵がCIAとテロリストを向こうに回して戦う話。
・とにかく忍法ウォーズをやりたかった。いかにして(見ている人が)考えなくていい構図に持って行くか考えた。
○デジタルとアナログ
・デジタルになって便利になった部分はもちろんある。たとえばセルには使える色に限界があったがデジタルは無限に使える。
・しかし映画は、監督が「何を使うか」ではなく「何を使わないか」を決める世界。その意味では作り手のイメージをセレクトする幅が多少広がっただけ。
・自分の中では、CGは「ジュラシック・パーク」の恐竜を観たときで終わっている。映画としての面白さはあくまでも別で、大事なのはストーリーやキャラクター。
・デジタルは計算したことしかできない。何が起きているかわからないアナログの方が、ラッシュフィルムを観る時には興奮した。
以上、特に「獣兵衛忍風帖」という作品についての部分などは、以前のトークショーなどでも聞いたことがある部分もありましたが、しかしやはりファンにとっては興味深い内容の数々。
個人的には、デジタルとアナログに関するお話から、アニメ作家としての川尻監督がどこに力点を置いているのか、伝わってくるものがあって興味深くうかがいました。
(ちなみに川尻監督の人となりや今回のリマスタリングについては、大沼氏出演のWebラジオでも触れられているので、興味のある方はそちらも是非どうぞ)
さて、その後に上映された「獣兵衛忍風帖」本編の内容については、以前このブログでも紹介しましたので、ここでは省略します。
しかし今回の上映の最大の見所であるリマスタリングされた映像については、映画館のスクリーン(それも最前列)で観ても、ほとんど全く違和感なし、であったということは
述べておくべきでしょう(さすがにゴミは皆無ではないですが…)
特に、家屋の生活感などが描かれた汚しの部分、ナイトシーンの靄の質感などは、実に美しく、はっきりと描き出されていたと感じます。
また、キャラクターのアップなどでは、筆の動きの跡のようなものが感じられたのも、今回の発見でした。
今まで幾度となく観た作品ですが、やはり何度観ても良いものは良い。当然ブルーレイも買う予定です(主にオーディオコメンタリー目当てですが)。
さて、そしてトークショーでの予告通り、エンディング後に流された特報ですが――おそらくは3本の内容をミックスしたものと思われます。
町で蕎麦を食べる獣兵衛を襲う折り鶴を操る(さらに巨大折り鶴で空を飛ぶ)美しき白拍子。
雪山で、自在に手を伸ばし獣兵衛に襲いかかる熊のような巨漢。
海の近い丘(?)で獣兵衛に襲いかかる人間バイク男(仮面ライダーアクセルみたいなものをご想像ください)。
そしてラストには、片目の老人とその目らしきものを持って飛ぶ鷹。
なにぶん、記憶頼りですので細部の異同についてはご容赦願いたいところですが、台詞なしの断片的な映像とはいえ、様々な場面で繰り広げられる戦いの様は、紛れもなく、新しい「獣兵衛忍風帖」でありました。
(それにしてもなんだか襲われてばかりですね、獣兵衛さん)
トークショーの内容からすると、「獣兵衛忍風帖2」確定というわけではなく、「獣兵衛プロジェクト」で今確実に形になっている(形になる)ものは、ショートフィルム3本のみのようであり、この先の展開がどうなるのかは全くわかりません。
しかし20年近く待ったファンとしては、これだけでも大きな前進。早くショートフィルム本編を、そしてその先を、是非とも観たいものだと…強く願う次第です。

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