「夜の魔人といくさの国 さまよえるヴァンピール」 吸血鬼も戦国史の一ページ?
最近はTVゲームでダウンロード専用ソフトが増えていますが、その中には時代ゲームファンも見逃せない作品も含まれています。
今回取り上げる「夜の魔人といくさの国 さまよえるヴァンピール」もその一つ。日本の戦国時代をモデルにした世界で、吸血鬼の生活を体験するという非常にユニークな作品です。
本作は一見ファンタジーのようなタイトルですが、ここで言う「いくさの国」とは、戦国時代の日本を思わせる戦国乱世の島国。
主人公は、この国に派遣されてきたヴァンピール=バンパイア=吸血鬼となって、覇王「織田のぶなが」の血を吸うことを目的として活動することとなります。
というと、かのドラキュラ伯爵の如く堂々たる吸血鬼を想像しますが、主人公はまだまだ駆け出し。乗っていた船がいきなり転覆して、無一文の状態でいくさの国に上陸し、戦国ライフを開始することとなります。
こうして始まるゲームは一日を昼と夜に分け、それぞれでコマンドを繰り返して進むこととなります。昼は人間の世界に立ち交じって(どうやら日光は平気な様子)仕事をしたり、町の人間と交流したりして暮らし、夜は吸血鬼となって町の人の血をすすったり、邪悪な魔力を発揮してしもべを操ったり…
吸血鬼といえど、いきなり大魔力を発揮してのぶながを襲うのは不可能。まずは地道に表の世界で金や人脈をゲットして、裏でしもべや魔力を増やしていくというのが、まずは基本となります。
さて、本作の舞台は、冒頭で述べたとおり戦国時代の日本的世界。織田家があるだけでなく、上杉・武田・今川等々、戦国大名が群雄割拠しています(言い忘れましたが、本作のマップは日本ほぼ全土をカバー。スタート地点はランダムですので、プレイによって別々の大名の城下町から始まることになります)。
そしてこの世界で暮らすのは主人公だけではありません。大名や家臣といった武士たち、そして城下町で暮らす職人・農民・商人等の町人たち…ほとんど無数に感じられる人々が、日々の暮らしを送っているのです。
そのため、ゲームでは主人公の全く与り知らぬところでも人々は動き、その結果の甚だしきは、大名家の興亡として表れることとなります(もちろん吸血鬼として勢力を伸ばして、裏から大名を操って他国を滅ぼすことも可能ですが)。
そんな(全く無力ではないけれども)自分も大きな歴史の流れの中に立つ一人に過ぎない、という感覚が、吸血鬼というファンタジックな題材を扱いつつも、実に歴史ゲームしていて楽しいのであります。
さらに本作は、ゴールに向かう道はほとんど無数にあります。
吸血鬼として真面目に(?)活動に励んで急速にしもべを増やすだけでなく、商人や職人に徹してひたすら金を儲ける、土地の人間と結婚してごく普通の家庭を営む、はたまた国から国へ流浪の旅を続ける…
この辺りの自由度の高さは、戦国ライフシミュレーションの名作「太閤立志伝」を彷彿とさせられました。
もちろん本作は定価700円のダウンロードゲーム、グラフィックはほとんどなく、キャラクターのデータは数字で、行動の結果は文章で示されることになります。さらに、自由度が高すぎて何をしたらいいか戸惑うこともしばしばで、その意味ではプレイする人を選ぶゲームではあるかと思います。
しかしそれでもなお、歴史の中で生きる(言い換えれば「さまよ」う)ということを、無味乾燥になる一歩手前で――この辺り、主人公を吸血鬼という適度に(?)人間離れした存在としたことが生きています――存分に味合わせてくれるというのは、実に得難い体験ではあります。
一気にクリアを目指してプレイするのではなく、歴史の頁を一枚一枚繰るつもりで、少しずつプレイしていくとぴったりな、そんなゲームであります。
「夜の魔人といくさの国 さまよえるヴァンピール」(ポイソフト ニンテンドー3DSダウンロードソフト)
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