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2012.08.28

「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次酒語り」第5巻 動かぬ証拠は何処に

 前田慶次郎の親友・直江兼続の若き日の姿を描く「義風堂々!! 直江兼続」、第1シリーズである「前田慶次月語り」の新装版も刊行が始まりましたが、現在連載中の第2シリーズ「前田慶次酒語り」の新刊も発売されました。

 この巻も引き続き、秀吉の小田原攻めを背景に描かれますが、しかしむしろメインとなるのは、その背後での徳川家康の企みであります。
 家康と徳川三傑――本多忠勝、榊原康政、そして井伊直政の三人が睨むのは、早くもこの戦いの先の戦いであり、そして兼続は、徳川家の強大な敵になるであろう上杉家に対するカウンターとして、意味を持ってくることになります。

 何故兼続が上杉家に対するカウンターとなりえるか? それは、上杉家の当主たる景勝が不識庵謙信の血を引いていない一方で、兼続が実は謙信の子であるから――
 と、またこの展開か!? と言いたくなってしまうほど、本作では何度も登場してきた兼続の出自。もう兼続の周囲の人間は皆知っていたものと思っておりました…というのは意地悪な言い方かもしれませんが、正直な印象であります。

 しかし今回は、これまでとは一味違います。兼続が謙信の子であることを示すアイテムが存在するというのですから…
 それは、謙信がかつて奈良宿院の仏師に彫らせたという地蔵菩薩像。若くして死んだ最愛の女・妙姫を弔うため、その仏像に謙信は二人の間の子の瞳を写した水晶の瞳(玉眼)を嵌めたというのであります。

 その玉眼と、兼続の瞳の模様が一致すれば、それはすなわち兼続が謙信の子であるという動かぬ証拠――なるほど、これまでは第三者からもわかる物証というものはありませんでしたが、こういう展開は新しい。
 それも、いわば虹彩認識を用いて兼続の出自を判別するというのが面白いではありませんか。

 もっとも、そのためには兼続の瞳の模様を先に見ておく必要があるわけですが、今回その役割を担ったのが井伊直政です。
 赤備えの兵を率い、「赤鬼」の異名を取った直政ですが、実は兼続とは一歳違い。それだけに兼続をライバル視すること甚だしいのであります。

 いかにも本作らしい、豪放無頼な若者として描かれる直政ですが、ファーストコンタクトの飲み比べでは兼続に完敗。しかし兼続の瞳を見るというミッションには成功し、後は証となる菩薩像を探すのみ…
(と、ここでテンションを上げた直政が、真っ赤な顔の「赤鬼」状態となるのが楽しい)

 小田原攻めそっちのけで始まった兼続の出自を巡る暗闘が、果たしてこの先どのような結末を迎えるのか――
 次の巻には、大遅刻したあの男も登場するとのこと、果たして彼がこの暗闘に絡んでくるかはわかりませんが、まだまだ一波乱も二波乱もありそうです。

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