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2012.09.05

「笑傲江湖」 第21集「江南四友」/第22集「湖底の囚人」

 ついに師匠から破門されてどん底状態、そんな自分に無私の愛を支えてくれる人に出会ったと思ったら、その愛ゆえに彼女と別れることになり、自分ではその事実を知らないという、どう考えてもどうしようもない状態の令狐冲。毎回のことですが、そんな彼に一大転機が訪れることとなります。

 今回冒頭から登場するのは、日月神教の実力者・向門天。東方不敗に支配された神教の中で、数少ない前教主派であり、それ故今では神教全体から追われる身の豪傑です。
 兄弟分にまで裏切られ(ここでグサグサ体に剣が刺さってもその後一向に堪えてない怪物っぷり)、さらに正派からも追われる彼が、ついに四方を囲まれた時――そこに現れたのは令狐冲。義を見てせざるは勇なきなりとばかりに向門天の助太刀を申し出ます。

 しかし向門天も一個の英雄、見ず知らずの男に命懸けの助太刀をさせることを断るのですが――ここで令狐冲が置いてあった向門天の酒を勝手に煽り、酒を酌み交わしたからには友だ、という実に痛快な論法で助太刀を認めさせるのが楽しい。
(もっともこの人の場合、本当に酒につられたようにも見えるから困る)
 力を合わせて何とかその場を逃れた後、向門天も「お前を兄弟と呼ぶぞ! 俺のことは兄貴と呼べ」と、実にわかりやすい豪傑っぷりを発揮するのも楽しい。腹に一物ある人間ばかりの本作において、実に気持ちの良い人物です。

 …というのはこちらの早合点。向門天もまた、心中にある企みを持っていました。彼に言われるまま、西湖のほとりに隠棲する江南四友なる一見風雅の徒、その正体は武林に隠れたる四人の大達人を訪ねた令狐冲は、あれよあれよという間に、四友と対決することになります。
 というのもこの四友、それぞれ琴・碁・書・画のドマニア。向門天がどこからか持ってきたそれぞれのジャンルの珍品が欲しいばかりに、令狐冲を倒せばこれをやろうという彼の口車に乗ってしまったのであります。

 かくて展開する四番勝負――なのですが、これが面白武術バトルに国の違いはないな、という感じの少年ジャンプ的展開。床の足跡から一歩も動かずに相手を倒すという剣術バトル、筆で書いた字が相手を襲うという謎の武術、碁の勝負といいつつ無数の碁石を投げつけてくる敵…最後の琴と笛の勝負も、弾き比べかと思いきや、琴から放たれるソニックブームを笛を手に躱していくという謎の展開になるのだから素晴らしい。

 結局全ての勝負に敗れた四友は、珍品欲しさのあまりに、もう一人の男との勝負を申し出ます。それこそは西湖の下に作られた地下牢に封印された男、そして向門天が探し求める前教主・任我行!
 全ては任我行を脱獄させるための向門天の企み、任我行と対峙した令狐冲は、相手の激しすぎるパワーの前に気を失い、気がつけば任我行の代わりに牢に繋がれる羽目に(四友も気を失っていた上に、珍品に夢中で入れ替わりに気づかないというボンクラぶり)。
 一難去ってまた一難というより、一不幸の上にまた一不幸、令狐冲の運命は…

 と、そんな不幸な主人公を放っておいて、復讐のために驀進する任我行。途中に現れた裏切り者を文字通り一ひねりにして、東方不敗に怒りを燃やせば、それに呼応して周囲の山が大爆発!(爆笑) …すごい漢だ。
 ちなみにこの場面では、任我行の底抜けの力を示しつつも、必ずしも完全無欠の人物ではなくむしろ一部では暴君として疎まれていたことを示す構成となっているのがなかなかうまいと思います(無闇なアップ中心のカメラワークはいかがなものかと思いますが)。

 そして当の東方不敗はと言えば――影武者を立てて隠棲し、ネイルや顔に念入りに化粧した上に、手芸三昧というセレブな暮らしを満喫。糸と針を無数に放ち、離れた布に一気に絵を描くという刺繍術を見れば、只者ではないことはわかりますが、どう見てもその姿は女、しかし盈盈は彼を「おじさま」と呼んでいたのではなかったか!?
(ちなみに吹き替えは女性が担当しているのですが、これが男が裏声で喋っているような声の出し方になっていて大いに感心)

 と、二大魔人の登場で大いに盛り上がってきたところで続きます。

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