「ナウ NOW」第5巻・第6巻 バトルの中で浮かび上がるもの
月一冊のペースで刊行中の韓国発武侠アクション漫画「ナウ」。先月発売の第5巻に続き、同じ作者の「黒神」最終巻と同時に第6巻が今月発売されました。
物語は、伝説の四神武殺法を巡る争いから、武林の、中原の運命を巡るより大きな戦いへと繋がっていくこととなります。
旅を続ける最中、不思議な雰囲気を持つ天竺人の少女・ニルヴァーナと出会った沸流一行。何故か正派たる華山派一門に命を狙わられる彼女を追って、さらに明王神教の法執行者・ダルマが出現、沸流たちにその拳が向けられることに…
というのが第4巻のあらすじ。これを受けて第5巻では丸々、沸流とダルマの死闘が、第6巻では沸流と同行する獣少女・貂鈴と鬼王母配下の昭君、豺狼の因縁の対決、そして明王神教の新たなる刺客・龍馬刀帝馬炎鉄と沸流の激突が描かれます。
正直なところ(これまでの巻もそうであったように)描かれるのはバトルまたバトルの連続、ストーリーの進みは遅いのですが――なるほど、20巻を超えるのもこれならば納得、というのは意地の悪い感想かもしれませんが――しかし、それを補って余りあるのが、このバトル描写の確かさです。
本作に登場する様々なキャラクターが操る、それぞれ異なる流派の武術――沸流の四神武殺法をはじめとして、ダルマの槍術、貂鈴や豺狼の白狼犬の技、そして龍馬刀帝馬炎鉄の底知れぬ武術。
そのそれぞれの技のそれぞれ異なる動きを、本作は迫力ある筆致で描き分け、その動きの中で個性を表しているのであります。この辺り、当たり前に聞こえるかもしれませんが、行うは難し。
様々な過去を背負ったキャラクターたちが入り乱れる本作のような作品において、必要にして不可欠な要素を、本作は見事にクリアしていると感じます。
本作のそんな魅力は、たとえば第5巻における沸流とダルマの対決の中に見ることができます。
明王神教の法執行者という(完全に一面的とはいえ)正義の体言者たるダルマとの対決の中において描かれる、沸流が死神を自称するに至った過去。そしてそれを踏まえた上で、実はどこか重なり合う両者の主張の、明確に異なる部分が戦いの果てに浮かび上がるという構造は、なかなかのものであります。
(ちなみにこのダルマの遣う神槍ナーガ、持ち主の殺気を吸収し、使い手と武器の一体化を人工的に成し遂げるというギミックが実に面白い)
そして、先にストーリーの進みは遅いと申しましたが、しかしもちろん、描くべきは着実に描かれていることは言うまでもありません。
特に今回は、これまで武林との関わりが今一つ見えてこなかった明王神教の真の狙いの一端がついに描かれたことで、物語の構造がかなり明らかになってきた感があります。
第6巻の後半に登場して底知れぬ存在感を見せる馬炎鉄(沸流と、武侠ものではお馴染みの「先に○手攻撃させてやろう」というバトルを繰り広げるのも楽しい)などは、この構造をある意味体現した存在なのでありましょう。
もちろん、物語はようやく全体の四分の一程度。ここからどのような展開を迎えるかはまだまだわかりません。
明王神教の実質的指導者という、いかにも大ボスらしきキャラクターは登場しましたが、何しろ武侠ものの強さの尺度は得てして相対的。これからどんな強敵が飛び出してくるかはまだまだわかりません。
まだ見ぬ武侠世界の展開に期待しているところです。
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