「猿飛三世」 第3回「風の巻」
高波藩の御用金千両が消え、主膳が手をつけたとの嫌疑がかけられた。主膳を助けるために才蔵・さぼてんと共に奔走する佐助の前に服部伴蔵と配下が現れるが、相手にもされない。しかし佐助たちはついに京都所司代で消えた千両を発見。風の術に目覚めた佐助は千両を奪還し、主膳の命を救うのだった。
そろそろお話のフォーマットが見えてきた「猿飛三世」第3回であります。
前回、牢人たちに捕らわれ身代金千両を要求されたお市。何だかんだで身代金を払うことはなかったのですが、同じ千両が高波藩の金蔵から消え、主膳に疑いがかけられたことから物語が展開します。
内部告発を受け、国元の沙汰が下りるまで蟄居の身となった主膳。このまま行けば主膳は切腹、お市は尼寺行き――そうはさせじと奔走する佐助の前に、ついに忍者集団・鴉を率いる服部伴蔵が出現することになります。
この服部伴蔵は、佐助が猿飛佐助の孫であるのと同じく、かの服部半蔵の孫。
といってもこの時点までに服部半蔵は少なくとも4人いるわけですが、どうやら互いの祖父が宿敵同士だったらしいことを考えると、半蔵正成か半蔵正就の孫なのでしょう。
正成は家康に仕えて数々の手柄を立てた一番有名な半蔵、正就はその不肖の子で配下がストライキを起こして解任された人物。正就はその後名誉挽回のために大坂の陣に参加するも、そこで行方不明となったのですが、佐助との因縁から考えると、この辺りが怪しいように思います。
閑話休題、京都所司代の命を受けて働きつつも、配下になったのではない、自分が手を貸しているだけだ、と言う伴蔵は、何やら色々と屈託を抱えている様子。
結局、お前たちなど敵ではない、むしろ放っておいた方が役に立つと佐助たちを見逃したことが敗北に繋がってしまうのですが、演じる波岡一喜の独特の存在感もあり、今後の動向が気になるキャラクターであります。
ちなみに今回のアクションシーンはラストではなく中盤に用意されていましたが、伴蔵自身が戦うことはなくとも(人数の差がかなりあったとはいえ)、佐助たち三人は圧倒されるばかりで、強大な敵であることを存分にアピールしていたかと思います。
さて、今回の佐助は、主膳とお市を助けるために奔走するわけですが、ここで印象に残ったのは、佐助の良くも悪くもの青臭さであります。
無実の罪で切腹させられるくらいならば逃げればいいという佐助に対し、それは自分を拾ってくれた大恩ある主家に対する裏切りになると侍のロジックで答える主膳――
これまで描かれてきた佐助のキャラクターは、世間知らずで短絡的、そのくせ実力はイマイチ…という、未熟者としての側面が強く、今ひとつ感心できないところがありました。
しかし今回、主膳の「(立場を考えれば)正しいのだけれども、人間としては納得できない」言葉に反発する佐助の姿は、素直に納得できます。
実力の方も、これまでは正体バレバレの謎の男・信三郎にフォローされてばかりだったのが、ほとんど実力で事件を解決したのは、まずは良かった、というべきでしょう。
(おそらくは佐助に聞かせるために国元からの使者の到着日を聞き出した信三郎もナイスフォロー)
…が、しかしそれで今回が諸手を挙げて面白かったか、というと、そうではなかったというのが正直なところ。
クライマックスで佐助が目覚めた「風」の術、その術の描写や内容と、ラストで主膳を救う際の描写があまりにもいいかげんすぎる、としか言いようがありません。
どう見ても小さすぎる布で空を飛ぶのは、まあ忍術だとしても、千両をどうやって持ち出したのか。野暮は百も承知ですが、潜入シーンにかなりの時間を割いておいて、こちらは描かないというのはいかがなものか。
ラスト、一度裁定を下しておきながら、目の前に突然現れた千両に裁定を覆す大目付のいい加減さもひっかかります(まあ、大目付の立場的に、あの場合あれ以外落としどころはないのかもしれませんが)
この辺り、もっと演出がコメディ、ナンセンスサイドに振れていれば全く気にならないところなのですが、本作は基本的なカラーはむしろシリアスなために、ちぐはぐな印象を受けます。この辺りのさじ加減が、本作の完成度に大きく影響してくると思うのですが…さて。
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