「笑傲江湖」 第32集「継承式」
さて、本作の縦糸とも言える「辟邪剣譜」を巡る秘密の多くが前回明かされましたが、続く今回描かれるのは、横糸とも言える武林の権力闘争にまつわる物語。令狐冲の恒山派掌門の継承式において、様々な思惑が露呈していくこととなります。
おそらくはあの人物に暗殺された恒山派掌門・定逸師太の遺言により、次の掌門となることになった令狐冲。冷静に考えれば尼僧の門派に男の掌門というのは無茶ですが、しかし令狐冲は義理堅く困った者を見捨てられぬ男。そして恒山派の尼僧たちも、幾度も命を救ってくれた令狐冲に絶大な信頼を寄せ、かくて前代未聞の継承式当日となりました。
(が、そんな日にも酒に目がない令狐冲)
そこにやって来たのは、桃谷六仙や老頭子に祖千秋、さらに藍鳳凰と、正派の継承式には思い切り問題のありそうな面々。さらに東方不敗からの大量の祝いの品を携えた日月神教の人間たちも大挙して現れます。
これに対して正派の人間は、方証大師と冲虚道長の両巨頭のみ。莫大先生が手紙を送ってくれた他は、誰も何もなし。
もっとも、華山派はちょうどこの日、林平之と岳霊珊の結婚式。これはこれでめでたいのですが、花嫁の父である岳不群は超ダラっとしてやる気がない態度。そして花婿の林平之はその前で滝のような汗…既にお互いの心根をある程度見切っている同士故のそれぞれの態度かとは思いますが、さすがに岳霊珊が可哀想になるレベルであります。
さて、舞台は恒山に戻り、色々と心配になるような混沌とした顔ぶれの中で、それでも滞りなく行われる令狐冲の継承式。しかしそこに現れたのは、もはや中間管理職というより使いっぱ感溢れる嵩山派の陸柏。五嶽剣派の盟主の命を奉じてやって来たという彼は、上から目線で五嶽剣派はこの継承式を認めないと宣告します。
本当にやることなすこと悪の組織の小物くさい陸柏ですが、今回ばかりはちょっと共感。継承式に、普通に日月神教の蝙蝠頭(戦闘員)たちが出席しているし、さすがに…
などと小さなことをいう人間は、江湖では尊敬されません。令狐冲はいつもの口車で陸柏を散々翻弄、その上、やけに美しく着飾って登場した盈盈が、藍鳳凰との協力プレイで五嶽旗と五毒教の旗をすり替えるという虐めに出ます(そういえばこの二人、親友ながら同時に登場は初めて? 間違えても敵に回したくないコンビです)。
挙げ句の果てに旗につけられた毒をくらった陸柏、最後は毒消しと引き替えに令狐冲を掌門と呼ばされる羽目に…
(そして男だろうが魔教だろうが、恒山派に入っておk、と言い出す令狐冲はさすがに調子に乗りすぎだと思います)
と、継承式も無事終わった令狐冲は、恒山の奥の院のようなところで、方証大師と冲虚道長から辟邪剣譜の由来を知らされます。
かつて宮廷の宦官が生み出したという剣譜――少林寺に伝わったそれを華山派の二人の弟子が見たことから華山派と魔教の戦いが勃発し、秘伝の内容が魔教にまで伝わったこと。そして秘伝の内容を知る少林寺の僧が還俗したのが林平之の先祖であること…
華山の洞窟にあった白骨死体の正体、華山派内紛の淵源、剣譜を継ぐはずの林家の人間の武功が平凡であった理由、本作で描かれてきた様々なピースが、一つにはまった瞬間であります。
そして二人の達人は、令狐冲に対し、左冷禅の野望の存在を語ります。彼が五嶽剣派の盟主となれば、次には他の中小流派を併呑し、次は少林・武当、そして日月神教… 江湖に戦いの連鎖を招くであろう左冷禅を阻むためには、令狐冲が盟主となるしかない! と言い出す二人ですが、またこのパターンか…人間力も含めて、やはりこの二人が最強ですね。
と、そこに襲いかかってくる日月神教の兵たち。東方不敗からの祝いと称して恒山派に侵入した彼らは、任我行と結びかねない令狐冲抹殺を狙っていたのであります。
が――何しろここにいるのは武林最強クラスの達人三人。しかも背後からは盈盈が駆けつけ、教主の命令の証である黒墨令を掲げ、逆に襲撃者を謀反人として討伐を命じます。
かくて戦いはあっという間に終結し、いずこかへ去っていく盈盈…って、前回もいずこかへ去っていったな盈盈さん。
「私は魔教の女…」と自ら身を引くのが切ないですが、やはり裏切り者に三尸脳神丹を飲ませるのはドン引きです。
というわけで、そろそろ二人の間柄にも決着をつけて欲しいところですが…
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