「忍剣花百姫伝 4 決戦、逢魔の城」 ついに集結、八忍剣!?
空天の法により20年の時を超えた捨て丸。しかし元の時代に帰ろうとした彼女が辿り着いたのは、10年前の世界だった。それが魔王が八剣城を襲撃する直前であることを知った彼女は、城を、父・朱虎を救うため、八忍剣の力を結集して魔王軍に立ち向かう。果たして滅びの運命を変えることはできるのか?
いよいよ全7巻の中間地点、第4巻まで来た「忍剣花百姫伝」。第3巻ではなんと時間を遡るという展開に大いに驚かせていただきましたが、この巻ではさらに意表をついた展開が待ち構えております。
神宝・破魔の鏡の力で20年の時を超えた捨て丸(花百姫)。そこで時空を超える力を持つ空天の法の術者と出会い、その時代での魔王を撃退することに成功した彼女は、再び時空の扉を超え、20年後の元の時代に帰ろうとします。
しかし、運命のいたずらか、神意によるものか、彼女が次に現れたのは、それから10年後、すなわち元の時代から10年前の時代であり――そしてそれは彼女が生まれ育った八剣城が魔王軍に攻められ、壊滅する直前の時間軸であったのです。
そう、今回の舞台となるのは、第1巻の冒頭で軽く描かれるに留まった、全ての物語の始まりというべきあの時。
あのシーンの裏側には、こんな物語が!? そしてあの場面とこの場面がこう繋がるのか!? と大いにテンションが上がります。
そしてテンションが上がるといえば、これまで少しずつ顔見せされていた八忍剣の残りのメンバーが、ほぼ全員顔を揃えるのもまたたまらない。
天外守部・白鳥霧矢・水魚郎・天魚といったこれまで登場した面々に加え、この巻では夢候・伊留加・醜草と一挙に3人が登場。これがまた、キャラ造形といい得意技といい、初登場にもかかわらず実にイイ味を出しているのであります。
(おや、一人足りないのでは…と思われるかもしれませんが、そこがどうなっているかは読んでのお楽しみ)
しかし――確かに大いに盛り上がるのは事実なのですが、果たしてこれで良いのか、と同時に感じてしまったのもまた事実。
ファンタジー的な側面が強いとはいえ、本作は時代もの。そこで時間を遡るというのだけでも十分危険球であるのに、本作ではさらに、歴史を、運命を変えようという試みが描かれるのですから――
この点については、正直なところ、今後のストーリーがどう展開していくかわからない現時点では判断し難い部分があります。
しかし、第3巻の感想で触れたように、時空を超えるという展開が、物語に、そして人物の関係性に縦方向の広がりを与えたことは、間違いなく事実でありましょう。
本作においてその大半が集結した八忍剣。しかし彼らのうち約半数は、実は役目を受け継いだばかりの新しい世代であります。
八忍剣は、長い時の中で顔ぶれは変われど、その使命を、技を、神宝を受け継いできた存在。彼ら一人一人の背後に、過去の忍剣士たちがおり、そして彼らの先には、未来の忍剣士たちがいるのです。
本作の主人公は、もちろん捨て丸こと花百姫であり、彼女が受け継いできたもの、彼女を巡る人々との縦横の絆が、本作のドラマを構成していることは間違いありません。
しかし彼女を守る八忍剣もまた、受け継がれてきた絆を背負う者たち。その絆が、運命の変転でどのように変わり、絡み合っていくのか――そのダイナミズムが、本作の魅力の一つであることは、これは間違いないかと思います。
少なくとも、本書のラストで味わう感動は、この構造抜きにはあり得ないものなのですから――
残すところはあと3巻。その中で花百姫と八忍剣の、そして他のキャラクターたちとの絆がどのように描かれていくのか――いよいよ文庫版を待っていられない、旧版でも良いので手を出してしまおうかと、真剣に悩んでいるところなのであります。
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