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2013.01.06

「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次酒語り」第6巻 史実の裏表を行く二つの物語

 上杉家を支えた重鎮にして前田慶次の親友・直江兼続の青春期「義風堂々!! 直江兼続 前田慶次酒語り」の最新巻であります。
 この巻では、第5巻に引き続き、小田原の陣と、兼続の出自を巡る暗闘が並行して描かれることとなります。

 ついに始まった秀吉の小田原攻め。諸将こぞって集まる中、直江兼続も参陣したわけですが、そこで彼が再会したのは伊達家の片倉小十郎であります。
 言ってみれば兼続と小十郎は似た者同士の立場ですが、しかし決定的に違うのは、小十郎の主君は…であること。

 そう、あまりに有名なお話ではありますが、伊達政宗はこの小田原攻めに大遅参(まあ、そこに至るまでに慶次郎と殴り合いとかやっていたのですが)。
 おかげであわや伊達家お取り潰しに…というところまでいったわけですが、本作の政宗は、ピュアというか何というか、それを胸を張ってやらかしてしまう困ったオレ様なのが、むしろイメージ通りで実に楽しいのであります。

 そんな政宗と兼続のファーストコンタクトが露天風呂というのも色々とインパクト十分で、頭を抱えている小十郎に兼続が同情しているところに全裸で胸張って突入してくる政宗という、思い切り行動がキャラを表すシーンには、笑うべきか感心するべきか、とにかく迷シーンであります。
(ちなみに小田原の陣といえば、「花の慶次」での、男だらけの露天風呂大会がこれまたインパクトが大きかったのですが、それを思い出してまた愉快に…)


 と、そんな政宗の乱入もあった一方で展開するのは、兼続の出自の証拠となる地蔵菩薩像の争奪戦であります。
 謙信が唯一愛した女性、若くして死んだ妙姫の菩提を弔うため、兼続の瞳と同じ水晶の瞳をはめ込んだ仏像を巡り、忍び同士の暗闘が繰り広げられることとなります。

 上杉側というより直江側で戦うは、これまでも彼の頼もしい従者として活躍してきた軒猿出身の次郎坊。
 一方、秘密を追う徳川方は、井伊直政配下の老将にして武田の三ツ者出身の下坂左玄――隻腕かと思いきや! と、文字通り、かの服部半蔵をも驚かせる「腕」の持ち主であります。

 その出自から察せられる通り、かねてからライバル同士だった二人の忍びの激突は、これまで忍びの存在脇に回ることが多かった(というより兼続以外の視点が珍しかった)本作においては、なかなか新鮮に感じられます。
 ラストには高橋よしひろもびっくりの思わぬ助っ人まで飛び出して、主役不在ながらも――というより、さすがに史実には逆らえぬ主役サイドの代わりに物語の幅を広げて――史実の裏側の物語のもう一本の流れとして、こちらもなかなか盛り上がっているところであります。


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