映画「るろうに剣心」(その一) 良い意味での漫画らしさを映像に
公開時に観ることができず、ソフト化されてからで恐縮でありますが、映画「るろうに剣心」をようやく観ることができました。言うまでもなく、「週刊少年ジャンプ」で連載された明治剣客活劇、私も大好きなあの作品の実写映画版であります。
これまでも漫画のキネマ版、小説の「銀幕草紙変」を紹介してきたので繰り返しになりますが、この映画版は、内容的には原作の冒頭部+武田観柳編(-御庭番衆)+鵜堂刃衛編といったところ。
飄然と東京に現れた剣心が人斬り抜刀斎の偽者騒動に巻き込まれ、その騒動の背後で神谷道場を狙う死の商人・武田観柳、そして観柳に雇われて抜刀斎を騙る狂気の人斬り・鵜堂刃衛と対決する――本作の内容を一口に言えばこうなります。
さて、そんな本作で最も気になっていた点と言えば、やはりビジュアル的な原作再現度と、アクションシーンの出来栄えですが、まず前者について言えばこれが実に素晴らしい。
原作そのまま過ぎて作り物めいてしまったり、リアリティを考えすぎて原作からかけ離れたものとなってしまったりするのではなく、ギリギリのラインで踏みとどまってみせる――もちろん全員が全員そのとおりとは言いませんが、しかし登場するほとんどのキャラクターが、原作から抜けだしてきたようなビジュアルで動きまわる様は、ファンとしては実に嬉しいものであります。
特に本作の二大悪役とも言うべき観柳と刃衛は、どちらも実に漫画チックなキャラクターでありますが、原作のデザインをほぼそのまま踏襲しつつ、しかしそれでも単なるコスプレに終わらない存在感を持って描かれているのには感心いたしました。
そしてアクションシーンについても、かなりの完成度と感じます。アクション監督が谷垣健治ということで、良くも悪くも時代劇離れしたものとなることは予想しておりましたが、今回は前者の割合が多かった印象。
これはチャンバラではなくアクションではないか、という向きもいらっしゃるかと思いますが、むしろそれこそが原作を忠実に再現していると言うべきでしょう。
(さすがに大ジャンプやバク宙はやりすぎ感はあるものの…)
特にクライマックスで観柳邸に殴りこんだ剣心が用心棒たちを相手に見せる超高速移動による撹乱戦法は、飛天御剣流のスタイルをうまく映像に落とし込んだものと感じます。
また、その後に続く剣心vs外印、左之助vs番神は、並行して描かれるものが片やスピード感あるテクニカルなアクション、片や技術もへったくれもない素手ゴロと、真反対なのがむしろ実にそれらしく、アクションのバリエーションという意味も含めて楽しい展開でありました。
総じて本作は、原作の良い意味の漫画らしさを、巧みに映像として再構成してみせたと、大いに評価できることは間違いありません。
が、それでは本作が百点満点、諸手を挙げて歓迎できる内容かと言えば――(明日に続きます)。
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