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2013.01.26

「ZIPANG PUNK 五右衛門ロックⅢ」(その一) 三度登場、古田五右衛門の安定感

 久しぶりに日本に帰ってきた石川五右衛門。空海の秘宝と呼ばれる津雲寺の黄金一眼仏を狙う彼の前に現れたのは、名探偵・明智心九郎だった。さらに堺を牛耳る蜂ヶ屋善兵衛、かつて五右衛門と対決した悪党マローネも現れ、事態は思わぬ方向に。天下人秀吉を向こうに回し、五右衛門は何を盗むのか!?

 久しぶりに劇団☆新感線の舞台を観て参りました。古田新太が石川五右衛門に扮して大暴れを繰り広げる「五右衛門ロック」シリーズ第3弾「ジパング・パンク」であります。

 「五右衛門ロック」は、京の三条河原で釜茹でになったはず石川五右衛門が、実は生きて海の向こうに飛び出していた、という基本設定で繰り広げられるシリーズ。
 過去2作はいずれも豪華キャストがノリの良い歌と音楽に乗って大暴れする、理屈抜きのエンターテイメントでありましたが、もちろんその基本スタイルは、本作でも変わることはありません。

 そして本作の最大の特徴は、舞台が日本であること。太閤秀吉が朝鮮出兵を行っていた時代を背景に、久々に日本に帰ってきた五右衛門が狙うのは、津雲寺なる寂れた寺に眠るという弘法大師空海の秘宝。黄金一眼仏なる奇怪な仏像に眠るそれを首尾良く奪ったかに見えた五右衛門ですが…

 その前に立ちふさがるのは、京都所司代の探偵方、助手の小林少女(服装はコナンくん)と少女探偵団を連れて歌い踊る名探偵・明智心九郎! さらに五右衛門に対抗意識を燃やす女賊・猫の目お銀、「五右衛門ロック」で暗躍した死の商人・アビラや、「薔薇とサムライ」の毒婦・マローネ、石田三成に豊臣秀吉までもが登場して、五右衛門の回りは敵だらけ。
 五右衛門側にも、「薔薇とサムライ」で活躍したシャルル王子に、あのかぶき者の前田慶次郎(伊賀出身の五右衛門と甲賀出身の慶次は幼なじみという思わず納得の設定!)といった頼もしい(?)仲間たちが加わり、秘宝争奪戦が繰り広げられるわけですが――

 何しろ、やっぱり今回も豪華なキャスト陣が、歌に踊りにアクションに、自己主張も甚だしく暴れ回るのですから、とにかく元気で賑やかであります。
 特に、心九郎を演じた三浦春馬は、とにかく歌も踊りもキレが良く、本作を引っ張っていく中心人物として大活躍。生で見たのは初めてですが、華のある存在感にただ感心。
 本作のそもそものコンセプトである「怪盗vs名探偵」、怪盗と名探偵が一つの宝を目指して虚々実々の駆け引きを繰り広げるという内容において、まず不足のない名探偵ぶりと言うべきでしょうか。

 そして、前作から続投のシャルル王子役の浦井健治は「色々残念な王子様」を見事に体現しておりましたし、今回のキーパーソンの春来尼を演じた高橋由美子は、周囲と一人違う超マイペースぶりが実に楽しい。
 しかし新感線ファン的に嬉しかったのは、前田慶次郎を橋本じゅんが、石田三成を粟根まことが演じたことで――この二人、ほとんど反則級のハマりっぷりで、ファンとしては本当に嬉しかったのであります。

 ここに、あの麿赤児演じる秀吉が加わるわけですから、もう収拾がつかなくなりかねないのですが――しかし、そこをがっちりと抑えるのは、やはり古田新太の石川五右衛門の存在感であります。
 実は作中でのお出番自体はさほど多くはない――本作の中でもメタっぽくセリフで言及しているように――のですが、古田新太という役者、石川五右衛門というキャラクター、その両方の存在感が、どんな物語であっても受け止めて、がっちりきっちり(物語のバイタリティを失うことなく!)収めてみせる。
 前作で完成したそのスタイルは、本作においても健在であります。


 が――(以下、次回に続きます)。



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