「妻は、くノ一」 第2回「あやかし」
なかなか快調な滑り出しのドラマ版「妻は、くノ一」、第2話は原作第2巻「星影の女」のエピソードを中心とした内容――松浦静山の屋敷で起きた怪事の謎に寺子屋の子供たちと挑む彦馬と、御庭番内の人間関係のアレコレに悩む織江の姿が描かれることとなります。
織江を探しに江戸に出てきたものの、何もしないでいては食ってはいけぬと、寺子屋の師範となった彦馬ですが、通ってくるのは問題児ばかり。そんなある晩、静山の屋敷に招かれた彦馬は、そこで、夜な夜な屋敷を騒がす怪現象――どこからともなく聞こえてくる祭囃子と、宙を舞う火の玉を目撃することになります。
が、翌日その現場に行ってみれば、その場に落ちているのは何やら白い玉。彦馬はなんとそれを材料に、寺子屋の教え子たちと、怪現象の謎解き――というより再現実験を始めるのでありました。
一方、先に平戸藩上屋敷に潜入していたお弓の要請により、応援として潜入を命じられた織江ですが、しかし勝手に彼女をを恋のライバル視しているお弓は、織江に襲いかかる始末(そもそもこのお弓、自分が恋する相手の名前を自分の腕に彫り込んでいる時点でどうなんだという…)。
それでも、潜入の日が迫る中、母と一緒に食事を取っていた織江は、母ともども、食事に入れられた毒に倒れてしまうのですが…
比較的原作に忠実だった第1話に比べると、かなりアレンジを加えてきた印象のある今回。
それでも大きく変わったように感じられないのは、原作でも特に印象に残った、毒に倒れる織江たちをはじめとした原作のエピソードを取り入れているから、というのはもちろんですが、そのアレンジが、彦馬と織江のキャラクターを立てる形で行われているからにほかなりますまい。
特に、静山の屋敷で起きた怪事件を題材に、子供たちに「自分の頭で考えること」を教えるという彦馬独特の教育法は、彼の合理的視点と、そしてそれ以上に他者の人間性を尊重する優しい心を浮き彫りにしていると言えます。
この、ある意味時代劇ヒーローらしからぬ性格こそが、彦馬というキャラクターの特徴であり――そして何よりもそれが、任務のため、いや己の身を守るためであれば、己の母親であっても犠牲にする過酷な忍びの世界に生きる織江を惹きつけたものでありましょう。
しかし今回は、その彦馬の美点(?)が、彼の命を危うくすることとなります。子供たちとともに彼が暴いた「あやかし」の正体が、その背後に潜む者たちを刺激し、彦馬は刺客たちの襲撃を受けるのですが…
そこに密かに彦馬を見守っていた織江が、このピンチに駆けつけて刺客を蹴散らすというのが今回のクライマックス。ほとんど素手で刀を持った相手を倒すという彼女のムーブがまた格好良いのですが、それ以上に、こういう形で織江の彦馬に対する想いを示すというのが面白い。
彦馬は気絶していて自分が誰に助けられたか気づかないというのはお約束ですが、上で述べたように非情な世界に生きるはずの織江が、顔を隠しているとはいえ自分の命を賭けて彦馬を助けるという形で、彼への想いを表すというのは、なかなか悪くない演出ではないかと思います。
前回の感想で触れた原作との相違点の一つ――誘拐犯を織江が退治しなかった点の、その理由が今回のクライマックスでわかったような気がいたします。
(もちろん、いささかストレート過ぎるきらいはありますが…)
何となくこの第2話で全体の方向性がわかってきたようなドラマ版。この先、どこまで見せてくれるのか、期待しても良さそうです。
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コメント
時々拝見させて頂いておりましたが
初コメントとなります。
この小説がドラマ化しているのを
こちらで初めて知りました。
この数年来TV観てない上、
新聞も読んでないので、
こうした情報には疎いです。
BSなんですね。
どうせ観られないや....
雁二郎のアレはあるんでしょうか?
投稿: coldsleeper | 2013.04.15 06:32
coldsleeper様:
はじめまして。これまでもご覧いただいていたとのこと、ありがとうございます。
BSプレミアムの時代劇は、どれも数ヶ月後には地上波でも放送されているので、きっとこの作品も放送されると思います。
雁二郎はまだ登場していないのですが、演じるのがくせ者の梶原善さんなので、きっとやってくれるだろうと期待しているところです。
投稿: 三田主水 | 2013.04.18 22:45
楽しみです。
アレが放送できれば「愛のコリーダ」も
無修正で....
>梶原善
名前は知りませんでしたが
何かで見た覚えがあります。
唯一小説のイメージに合致している
気がします。(胡乱な感じが)
松浦静山役も剣客としてはよいとしても
艶福家としての面が薄いように思えます。
助兵衛そうではありますが
投稿: coldsleeper | 2013.04.19 06:13
coldsleeper様:
期待通り、梶原善の雁二郎はとても良いですね。
静山もそうですが、全般的に原作に比べると重めのトーンの作品なので、雁二郎が出てくるとほっとします。
投稿: 三田主水 | 2013.05.05 23:30