「妻は、くノ一」 第4回「忍びの宿命」
気が付けばもう全8回の前半終了となった「妻は、くノ一」。その第4回は「忍びの宿命」、忍びとしての任務を果たすために重い代償を支払う織江の姿が描かれるのですが…その一方で、原作でも大暴れのあのキャラが登場と、波乱含みのエピソードであります。
今日も寺子屋で子供たち相手に授業に励む彦馬ですが、絵に描いた象の存在を子供たちが信じてくれず悪戦苦闘中。そんな折り、大名屋敷から盗まれた品が古井戸に投げ込まれたものの、そこにはガスが溜まって人が降りることができず…という騒動が起きます。
その一方で静山に呼び出された彦馬は、そこで自分が隠居する際に取った年上の養子・雁二郎と対面。シーボルトの江戸入りをその場で知らされた彦馬は、静山の計らいでシーボルトらの宿に同道することを許されます。
さて相変わらず静山のいる下屋敷で飯炊きを続ける織江は、同じ屋敷の下働きにしつこくつきまとわれる羽目に。そしてある晩、ついに寝ているところに忍んできた男に対し、織江は…
と、今回は彦馬パートも織江パートも、原作第2巻をベースにした展開なのですが――原作第2巻のラストで、何とも厭な後味を残した織江を襲った運命を、まさかドラマの方ではさらに重い内容にしてしまうとは。
簡単に言ってしまえば原作の方では結局未遂に終わったものが、こちらでは…となってしまい(しかも彦馬の方は織江との思い出にふけってポワワワーンとしていた、見ているこちらは悪い意味で驚かされました。
確かに原作においてもこの場面は、織江の(望むと望まざるとにかかわらず)背負った忍びとしての運命の過酷さ、汚さを描くものではありましたが、それを描くのであれば原作通りの展開でも良かったのではありますまいか。
…というのは原作厨のいささかナイーブな見方でありまして、実際の映像として見れば、これはこれでそれなりによくできた展開であります。
自分を襲う運命を察知した織江の覚悟を決めた表情といい、嵐が去った後に彦馬との思い出の桜貝を祈るように押し当てた姿の美しさといい――たとえ以前のような暮らしに戻ることはできなくとも、いついかなる時にも織江の胸の中に変わらぬ存在として彦馬が在り続けることを、そして彼女がそれを唯一の支えとしていることを、何よりも雄弁に描いたシーンなのですから。
そしてラスト近く、静山と連れだった彦馬と出くわし、静山に土下座する形でその場をやり過ごした織江が、そっと彦馬の背中を見つめ、彼に背負われた在りし日を思い出すシーンの切なさも、それだけに際立つのであります。
とはいえ、やはり前回も書いたように、ドラマ版は原作の重い側面、悲劇的な側面を強調するきらいがある…とちょっと残念に思っていたところに、原作のコミカルな側面を体現したかのような雙星雁二郎が登場するというのは心憎い。
原作での、「異常に老けて見えるけれども実は若い(と思ったら実は…)」というのはさすがに無理がある&ややこしいという判断か、適当ななり手がいなかったので年上を仕方なく養子にした、という設定に変わっていたのは少々残念ではあります。
原作でのあの見事なすっとぼけっぷり、空気読まないっぷりを、くせ者・梶原善が見事に体現しているのが、何とも嬉しい。映像化する際はどうするのかと思っていた、あの子犬芸も登場して、大いに満足であります。
これならばこの先の…も期待して良さそうであります。
さて、今回はちょっと織江視点が印象に残ったせいか、話の本筋に直接絡まなかった印象もある彦馬ですが、しかし彼の印象は、周囲の人々の中で徐々に変わっている様子。
特に、織江の上司であり、彼女に懸想する御庭番・川村が、子供たちに問われて妻はいると答えた彦馬の笑顔をじっと物陰から窺っているラストシーンは、今後の波乱を予感させるのですが…
と、蛇足その1。今回の南町奉行所の登場は、いくらなんでも無理があるでしょう。原作と改変してために生じてしまったおかしな場面かと。
蛇足その2。原作では子供たちが知りたがったのは象そのものの姿ではなく、その股間だったのですが、今回の内容でそれをやるとなんだかこう…なので、これは改変してOKですね。
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