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2013.04.24

「猫絵十兵衛御伽草紙」第7巻 時代を超えた人と猫の交流

 ちょうど半年ぶりのお目見え、「猫絵十兵衛御伽草紙」の最新巻、第7巻が発売されました。猫絵師の十兵衛と元・猫仙人のニタ、人間と猫又のおかしなコンビは今回も元気であります。

 第6巻同様、今回も全6話が収録されていますが、今回はどちらかというファンタジックなエピソードが多めの印象があります。

「三尸の虫と三匹の仔猫」…長屋の腕白小僧の悪行を告げ口しようとする三尸の虫に三匹の仔猫たちが立ち向かったことで始まる大騒動。
「猫髪結床」 所帯を持ったばかりなのに猫にかまけてばかりの髪結。気持ちが収まらないのはおかみさんですが…
「つくも猫」…蚕農家に仕事を依頼された十兵衛。そこで猫が描かれた屏風に名主の病弱な娘が引きずり込まれるという騒動が起きて…
「白浪猫」…白波物を演じることになった役者の三之助。猫を相棒にした老盗人と出会った彼が目撃する不思議な人間模様。
「嚇怒猫」…ある日突然押しかけてきた雌猫又・百代。ニタの愛猫を自称し、一方的に十兵衛を敵視して大暴れする百代にニタは…
「猫の子」…まだまだ駆け出しだった頃の十玄先生が出会った、猫に守られていた子供。その子――十兵衛を引き取った十玄先生の奮闘記。

 そんな中でも目を引くのは、「嚇怒猫」「猫の子」と、基本的に一歩引いた形で狂言回しを務めることが多い十兵衛とニタ自身の物語が収録されていることでしょうか。
 そんな中でも、十兵衛の過去の秘密(?)が明かされた「猫の子」は特に印象的なエピソード。以前に十兵衛が半ば冗談めかして、猫に育てられて猫の子と呼ばれていた、と語っていた、まさにその通りの内容なのですが、猫と人の絆・人と人の絆が、いかにも本作らしい柔らかいタッチで描かれているのが泣かせます(猫に対して、人の言葉で別れを告げる十兵衛がまた…)

 その他のエピソードでも、江戸の社会からドロップアウトした人々のために盗みを働く一人と一匹を描く「白波猫」は、内容的に単純に美談とするにはやはりためらいをおぼえるものの、共に肉体的ハンディキャップを負った人と猫が文字通り支え合って生きる姿は強く心に残ります。


 ちなみに、本作のファンにぜひご覧いただきたいのが、先日発売された、同じ作者の「ねこ・かぶりん」であります。
 時代ものではなく、作者と猫の関わりを描いたエッセイ漫画ですが、楽しいことも悲しいことも、すべてひっくるめて猫との日常を描く内容は、こういう体験をしていれば猫の姿・生態もリアルに描けるはずだ! と大いに納得の作品。
 人と猫の交流の姿は、時代こそ違え、本作に通じるものがある――と言うべきでありましょうか。


 …しかし、冷静に考えると百代が十兵衛をライバル視するのってちょっとすごいですね。

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