「水滸伝」 第05話「拳にて鎮関西を打つ」/第06話「魯達 剃髪し文殊寺に入る」
感想の方はだいぶ遅れてしまいましたが、放送の方は順調に進んでいるTVドラマ「水滸伝」。ドラマ冒頭はかなりオリジナル展開に近い内容でしたが、今回辺りは完全に原典通り――と言いたいところですが、作中の時系列を整理してあるところがなかなかに面白いところです。
さて、第5回のタイトルは「拳にて鎮関西を打つ」。原典でも見せ場の一つ、花和尚魯智深…いや、この時点では魯達が、悪人・鎮関西の鄭屠を素手で叩きのめすエピソードであります。
その鎮関西がどのような悪行を働いたかは、第4回にいやというほど見せられましたが、薄幸の美女・金翠蓮とその父を嫌というほど追い詰めたその外道っぷりは原典以上。ここまで外道であれば、魯達の怒りが爆発してもむしろ当然と納得出来ます。
その魯達、頼みにしていた上官が鎮関西(の背後の高官)の力に怯えて何もできないのに業を煮やし、ついに力尽くで金翠蓮らを逃がすことを決意します。それに巻き込まれた史進と李忠こそいい面の皮ですが…特に、なけなしの稼ぎを出したらシケてるだの言われた上に(ここまでは原典通り)、唯一の武器である木の椅子を魯達に奪われた李忠。
それはさておき、父娘を逃がす間に鎮関西の本業である肉屋に乗り込んだ魯達は、ここで原典通り赤身だけ十斤よこせ、次は脂身だけ、その次は軟骨だけ…と嫌がらせに走るのですが、いやこのシーンがもう本当に鬱陶しい!
原典では何となく読んでいたシーンですが、当時の肉屋があまり衛生的ではないところに、鎮関西が、実にもっさいビジュアル。この男が、汗水垂らしながら肉を切るシーンは本当に辛そうで、ここだけは鎮関西に少しだけ同情いたしました。
ここでようやく魯達の意図に気づいた鎮関西は、肉切り包丁片手に魯達に襲いかかるわけですが、もちろんそれこそ魯達の思う壺。それを李忠の椅子で受け止めて(椅子真っ二つ)躱すや、次に盾にしたテーブルをぶち抜いて鎮関西に豪拳クリーンヒット! さらに二発、三発! と叩き込まれた鎮関西は自分のやらさばいた肉のやら、血に塗れて地べたに転がり、非常にゴアゴアした感じで息絶えるのでした。
さて、原典ではこの後すぐに魯達が魯智深になる様が描かれるのですが、ドラマの方では林冲の受難劇パート2が描かれます。
もう、殺意が沸くくらいに鬱陶しいバカっぷりを晒す高衙内(これがまた無駄に長い)の配下に唆された陸謙は、最初は親友を裏切れるかと見栄を切ったものの、その直後に速攻で裏切り、林冲を誘い出す手先に…
危ういところでそれに気づいた林冲は慌てて取って返して妻を救ったものの…というところで、ここからは第6回。高衙内と陸謙は林冲の剣幕に恐れをなして役所に逃げ込み、高衙内は再び、ここで触れるのも真剣に嫌なくらいのバカっぷりを晒します。さすがの高キュウもあまりのクズっぷりにちょっと引いたくらいの。
しかしこんなんでも一応自分の養子、高キュウが陸謙らを使って何やら企んだところで、今回の林冲パートはおしまい。
再び魯達パートに戻って、鎮関西を殺して高飛びした魯達は、代州で偶然金翠蓮の父と再会。聞けば翠蓮はここで土地の金持ちに面倒を見てもらっているとのことで…
と、この辺り、原典では「ああそうですか良かったですね」という感じだったのですが、このドラマ版では魯達と金翠蓮の間にフラグが立った印象だっただけに相当に切ない。
魯達の方はどこまでわかっているかちょっと微妙ですが、翠蓮が悲しげな瞳で魯達を見つめるシーンは、彼女がいかにも幸薄げな美女だけに、より一層胸に迫るものがあります。
結局、翠蓮の旦那の手引きで五台山は文殊院に入ることとなり、翠蓮やその父が見守る中で剃髪される魯達。
ここでさすがに一瞬引いたけど、覚悟決め、生まれて初めて丸刈りになる魯達がまた微妙な表情で…などと言っている場合ではなく、やはりここでも印象に残るのは翠蓮の表情であります。
ああ、出家するということは、彼女と完全に縁がなくなってしまうことなのだな…と、ここに至って我々にもその行為の重みがわかるというのは、このドラマ版のなかなかうまい構成でしょう。
もっとも、魯達改め魯智深は、その辺りどのくらいわかっているのかさっぱりで、俗世に居た時と全く変わらない言動で周囲にドン引きされるばかり。
長老がかばってくれているのをいいことに呑気な魯智深ですが、彼を追い出すべく周囲は何やらセコい陰謀を…というところで、次回に続きます。
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