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2013.05.21

「妻は、くノ一」 第7回「身も心も」

 ついにドラマ版「妻は、くノ一」もラスト目前であります。織江が招いた松浦静山の危機を自分の力で解決しようとする彦馬、御庭番から抜けることを決意した織江…二人の運命はいよいよ大きな転機を迎えることになります。

 静山のもとから織江が盗みだした書物「西洋武器惑問」。その書物への書き込みが、見ようによっては幕府への叛意とも読み取れることから、それが静山への追求に使われることになりかねない…と悩んだものの、最終的にはそれを川村に渡してしまった織江。
 彼女の懸念通り、川村は幕閣に書物を提示して、静山の追い落としを図るのですが――

 と、そんな自分の「妻」の行動へのつぐないをせんと頭を悩ませていた彦馬ですが、思ったよりもあっさりと閃いた対抗策は、「同じ書き込みをした本を写本して江戸に流通させること」。
 なるほど、木を隠すには森の中、そして森がなければ木を植えてしまえばよい…という発想の逆転であります。

 実はこの辺りは原作の第4巻「風の囁き」のエピソードなのですが、こうして映像で見てみると、一から本を写した上に、そこへの書き込みまで再現するのは、実はとんでもない大仕事だったのだなあと、妙なところで感心。
 それを「一晩でやってくれました」的にやり遂げた彦馬はもしかすると想像以上にすごい男なのかもしれません。わざわざ、自分と織江が舟に乗っているマークを書き足すくらいですし。いや、それが元で彦馬がやったとバレたわけで、やっぱりそうでもないか…
(ちなみにここで彦馬が思い出す織江との会話は、原作既読者であればかなりニヤリとできるかと)

 さて、彦馬の作戦が大成功して静山への追求は沙汰止みとなった上、口説いていた織江がついに母親ともども逃走と、雙星夫妻に二重に恥をかかされた川村は二人の抹殺を宣言。
 そして、彦馬への刺客に選ばれたのは、織江の親友であるお蝶…と、ここからが今回のクライマックスであります。

 自分が狙われているとも知らず夜道を行く彦馬に襲いかかるお蝶。為す術もなく追い詰められた彦馬を間一髪で助けたのは――織江!
 初めて妻が戦う姿を目の当たりにした彦馬、初めて夫の前で正体を隠すことなく戦う姿を晒した織江。さらに命令とはいえ、幼馴染の想い人を襲い、その幼馴染と殺し合いを演じることになったお蝶と、三人誰ひとりとして幸せにならない戦いです。

 ヒーローが自分の愛する者の前で正体を明かす、正体を知られるというのはある意味定番の展開ですが、しかし今回描かれたそれはあまりに重い。愛する人を眼前にしながら、ただ「来ないで!」としか言えなかった織江の心中は、察するにあまりあるものがあります。

 そしてもう一人、正体を明かした人間がいるのですが――こちらはあまりにもあっさりなのが拍子抜け。原作では「えええええ、お前!」的な驚きがあっただけに、ちょっと、いやかなり残念であります(まあ、ほとんどバレバレではありましたが…)

 何はともあれ、次回でいよいよ最終回。ドラマ版として、いかなる幕引きを用意しているのか、最後の最後まで目が離せません。


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