「仮面の忍者赤影Remains」第1巻 人の悪意と欲望に拳で挑め!
秋田書店は過去の名作のリメイクに比較的熱心な印象がありますが、この4月にも3つの横山光輝作品のリメイクが発売されました。その一つが本作「仮面の忍者赤影Remains」…あの赤影を、「重機甲兵ゼノン」や「KAZE」の神崎将臣とくれば、見逃すわけにはいきません。
その本作の粗筋自体は、「赤影」としてはお馴染みのもの――金目教なる謎の教団を率いる甲賀幻妖斎とその配下・霞谷七人衆に対し、木下藤吉郎の命を受けた竹中半兵衛に請われた赤影ら飛騨の影一族が立ち上がるというストーリー。
原作漫画及び特撮版の第一部に相当する、そして以後の様々な赤影リメイクの題材となっているあれであります。
しかし「赤影」という作品の厄介な(?)点は、「赤影」と言われて多くの人間が連想するのが、あくまでも普通の忍者漫画の範疇にあった横山光輝の原作漫画ではなく、ガジェット的、ビジュアル的に時代劇という枠を飛び越えて展開していった特撮版である点ではないでしょうか。
そのため、後にアニメ化された際に横山光輝がセルフリメイクした「新仮面の忍者赤影」が、逆に「何だか「赤影」っぽくない…」と思われてしまうという珍現象が起きたりもしたわけですが…
その辺り本作の面白い点は、登場人物配置はあくまでも原作漫画版を踏まえつつも(といっても、七人衆の中に岩鉄がいたり、青影がちょっと女の子っぽかったりと、「新仮面の忍者赤影」の要素も取り入れているのが楽しい)、登場するキャラクターのビジュアルや忍法に、特撮版のテイストを取り入れている点でありましょう。
なにしろ冒頭から、巨大な金目像がその腕の一振りで城を破壊するという豪快なシーンが展開されたと思えば、赤影・青影・白影の影一族、そして霞谷七人衆が操る忍法は、どこかオーバーテクノロジー的な特殊能力(特に片腕が剣や槍、機関銃にまで変形してしまう白影など実に面白い)で、なるほど、あの特撮版の破天荒なノリを、こんな形で料理してきたか…と感心いたします。
そして、その一種のオーバーテクノロジーが、ガジェットとして、そしてテーマに密接に絡むものとして存在しているのが、実は本作の最大の特徴でしょう。
その力――「魂龍」と呼ばれるそれは、珠の形で登場し、それぞれが「力」「蟲」「水」など特有な力を持つものとして描かれます。
登場する術者たちはそのそれぞれの力を引き出し、それが忍法となるわけですが、珠の組み合わせで新たな忍法が生まれるというのは、ちょっと今っぽい設定かもしれません。
それはさておき、この「魂龍」というのは実は諸刃の剣。使えば使うほど己の体力を――いや、赤影の場合は己の命を――消耗するというだけではなく、赤影によれば、この力は人の際限ない欲望と結びつき、遠い将来この国を滅ぼすというのですから…
まだこの第1巻の時点ではその詳細は不明ですが、どうやら悪意や欲望といった、人のネガティブな意志がその源に絡んでいるらしい「魂龍」。赤影はその力を用いつつも、これをこの世から滅ぼすべく、戦うのであります。
しかしそんな赤影の姿は、実に神崎ヒーローらしいと言えます。
人の悪意や欲望の存在と、それが横行する現代社会に対する批判的眼差し。作者の作品の多くに共通するモチーフは、実に本作でも健在であると感じます。
そしてその力に押し潰されまいと、自らの心身を痛めつけながらもなおも立ち上がり、拳を振るうヒーローの存在もまた…
個人的な印象では、この辺りのテイストは、少々鼻につくものがあって苦手なのですが、しかしそれがないのもまた寂しい。
さて本作ではその辺りのさじ加減がどうなることか――「赤影」ものとしては申し分なし、あとは作者の作品としてどのような形を取ることか、これからの展開を拝見いたしましょう。
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